363話 説明と異変
巽さんにあの猫についてちょっと説明をする。
「───成る程。およそ7~8年前にお兄様の拾ってきた妖怪兼ペットと」
「うん。正確にはだった…だけど」
「野に放たないで欲しいのですが…まあ、そのおかげでこの近辺が平和だった理由が分かりましたが…」
かなり微妙な顔の巽さん。
まあ、あの報告書を見る限り、絶対に人員足りてませんもんね。
「長谷川部長の騎士団の9割が重要拠点防衛に回されている時点で…どうしようもないのですが」
巽さんの目が死んでるぅ…人材不足気限界まで来ているんだろうなぁ…
む?
「姫様?」
訝しげな顔で僕を見る巽さん。
もしかして、気付いていない?
「あれ」
僕はそう言ってそこを指さす。
「えっ?……!?」
異様な光景だった。
スキルがそれを察知するまで僕も気付かなかった可能性がある。
それは地上1メートルの上空にあった。
見た目は裂け目だ。縦におよそ2メートルほど割けている。
「フィラさん。あれ、なんだろうね」
「見た事無いわ…ゲートでは無さそうね。それよりももっと…」
フィラさんが言葉を止める。
その裂け目からグロテスクな何かがこちらを見ていた。
「巽さん!目を逸らして!」
「っ!?」
皮の無い人体模型のような、ただ、目が5つあるのと、口が縦に付いており歯では無くイソギンチャクのような短い触手がビッシリと付いていた。
「えっと、ここは貴方がたの住む所では無いですよ」
声を掛ける。
その人体模型(仮称)は少し驚いたようなリアクションをし、頷いた。
「あ、言葉は分かりますか?」
「姫様!?」
驚く巽さんの方を見て首をかしげる。
「もしかして、この人の言葉は分からないけど、僕の言葉は分かるんですか?」
頷く。
どうしたものかなぁ…
「フィラさん、ゲートをマンションのスタジオに繋げてもらえる?」
「分かったわ!」
そう言ってゲートを少し開ける。
「ゆーちゃん!聞こえる!?」
ゲートの向こうからゆる姉様の声が聞こえる。
「あ、はい。聞こえてます」
「其奴にザルカンの民か聞いてみて!」
「ザルカン?…貴方はザルカンの方なんですか?」
僕の問いにその人体模型さんは両手を挙げる。
「そうみたいだね…ハヴァスターイは無事か聞いてみて!」
「ハヴァスターイさん?は無事ですか?」
あ、また両手を挙げた。
「ハヴァスターイの傘下にいる邪神みたいだね」
「えっ!?邪神!?」
驚く僕に人体模型さんはまたも両手を挙げる。
「えっと、ハヴァスターイさんって、どなたですか?」
「ああ、名前言ってなかったから分からないか。複数の名前があるうちの一つなんだけど、来ていたザルカンの主神だよ」
あの邪幼女神様か!
「ハヴァスターイさんを呼んでいただけますか?」
人体模型さんに声を掛けると手を上げ下げする。
「畏れ多くて無理…って感じだね」
「おやつの時間だって言っているとお伝えください。それで分かると思いますので」
そう言うと人体模型さんは頷いて居なくなった。
「…巽さん。急いでそこの洋菓子屋さんに言ってケーキを買ってきてもらっても?」
「えっ?ええ…っと、わかりました」
巽さんはもの凄く混乱しながらも洋菓子店に走って行った。
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