704話 神話覚醒
「不要だよ」
配信の中『お願いがあります』と飛び込んできたリムネーにユグドラシルが一言。
『しかし、何も知らぬ幼子は…』
「ねえリムネー、今回の件はね、裏で唆した人達がいるんだよ。中古の物を押しつけて地獄への切符を渡した人達がね」
そう言われ、リムネーはハッとする。
『…一罰百戒、ですか』
「何度か言ったはずだし、その度にゆーちゃんが全力で頭下げてきたりするから結局今回も巫女様が助けてくれるだろうって甘く考えているんだよ。
ゆーちゃんはもう諦観しはじめているのにね。4度目?5度目?凄いよね…身命を賭してまで皆のためって頑張って、それでも皆当たり前のように「助けろ」とか「力が足りない」とか「お前のせいだ」って。
ゆーちゃんの心が傲慢だったらそういった人を内心でも見下せただろうに、あの子は何処までも聖人だった」
そして目を閉じ、少し泣きそうな顔をする。
「だから外されたんだよ。あの子は…」
リムネーにはその意味が分からなかった。
SIDE:協会本部
「ガッデム!」
夜番の香也が机を叩く。
「イや、何故そこハ日本語を使わなイのですか?」
「グローバルに罵りたくなったんだよ」
「うわぁ…同じチームながら訳が分からないですね…あれっ?まさか私もイロモノチーム扱いという…」
「ようこそ、イロモノチームへ」
「無駄に低音で良い声出さないでぇぇぇッ!?」
無駄に良い笑顔と低く渋い声をつくる香也にミシェルが悲鳴を上げる。
「デ、どうしてそんナに怒って?」
「ああ、神国に奇襲攻撃を仕掛けようとしている連中が居るんだよ。そういう事している連中は中東含めその辺りかなって思ったんだけど…どうやら違うらしいんだ」
「えっ?いや、何処情報ですか?」
「今現在神国放送局で配信されているよ」
「いや、貴方見ていないじゃないですか」
「ああ、式神の目から情報が来ているからね。そして世界中回った際に100体近くの監視用式神をばら撒いてきたんだけど…動いたのは中米」
香也の台詞に2人が顔をしかめる。
「…あちらは昔ダンジョン侵攻で国の統廃合が多く乱れていませんでしたか?」
「うん。凄かったよ。遊び感覚でヘッドショット決めてくる狂人とか、腕切り落として時計強奪しようとしたり、こんなナリだから大男に攫われそうになったりね」
「うわぁ…」
「まあ、南欧の裏路地あルあるデすね!」
「いやイタリア…………は、ともかくヴァチカンとかギリシャとかは…」
「「あー!せんせいー!ミシェルさんがイタリアさんを仲間外れにしていますー!」」
「どうしてそう言う所だけ流暢な挙げ句ハモれるんですか!?」
「……煩いぞ馬鹿共…」
グッタリとしながらも報告書作成をしている藤岡が騒いでいる3人を咎める。
「課長、どうしたんですか?かなりお疲れ…というよりも死にかけてません?」
「神兵殿と岩崎兄監修の特訓をな…体は強制的に回復されたから無事だが、精神的にキツい」
珍しくそうぼやいた藤岡に香也は目を見開く。
「えっ?結羽人さんの特訓とか、人類には早すぎるどころか神々でも無理ですよ?」
「何故お前が知っている?」
「あの人高校時代既に厚さ4センチ位の鋼板を密着状態のままゆっくり曲げてましたからね?あと、H鋼抜き手で突いたり」
「兄者サン、何と戦っテいたんでスか?」
「人なの?」
尤もな2人の問いに自身が元凶かもとは言えず、アルカイックスマイルをする香也だった。
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