993話 兄者死亡説
朝からとんでもない話を聞いた。
兄さんが救援に向かった世界の主神から兄さんが亡くなったとの一報が入った…との事だった。
なんでもダンジョンからワラワラと無限に湧き出るモンスターをちぎっては投げ千切っては投げ…ありったけの武装で攻撃をし、最後はもの凄い神気を発しながらダンジョンに突入し、ダンジョン諸共自爆したらしい。
そしてその世界からダンジョンは駆逐されたとのことだった。
───それなんてナントカ無双?
兄さん死亡説が流れた一番の理由はその世界が上位世界の中で上級…階層世界であり、そこのダンジョンを破壊できるとすれば本気で兄さんの魂まで燃料にした自爆特攻位だとか。
そこまで兄さんは評価されているのか…鉄砲玉として。
傭兵に名誉の戦死も何もない気がするけど…うん。
その凄い神気を発してって…神祇結晶じゃないかなぁと思う。
…考えたくはないけど、もし死んでしまったのなら白獅子達や廣瀬お姉さんが反応するだろう。
僕の方から死んだとは断定しないし、もし神様方から死んだと認定を受けても行方不明扱いのままにしておく。
さて、朝食を食べてお仕事に行こうかな。
な ん か お お ご と に な っ て ま す け ど!?
メディアがこぞって岩崎結羽人死去の報道を流している。
ゆる姉様含め神様方や箱庭メンバーは兄さんのことを一切外部に漏らしてはいないらしい。
さて、これはどこから漏れ出た話なんだろうか。
それを出勤して知る僕ってなんだろう…
あと、メールの量がエグいことになっている。
ほぼほぼメディアからの取材依頼。
しかも全世界と言わんばかりの勢いで来ている。
「岩崎…凄いことになっているが…大丈夫か?」
僕が呻いているのを見て察した課長が心配そうな顔で聞いてきた。
「取材NGなのに業務妨害レベルでメールが来ています…」
「本当に…どこから得た情報なのやら…」
「正直兄さんは傭兵的なモノをしていた訳ですから死という可能性も考慮しては居ますよ」
「えっ?」
課長は僕の台詞が意外だったのだろう。目を見開いて固まっていた。
「ただ、同時にどうやっても死にそうにないよなぁ…とも思うので目の前で死なない限りはダミーだと思うようにしています」
「…成る程。確かにな」
言わんとしていることが分かったのか課長は一瞬周りに目をやると息を吐いた。
「西脇、情報操作はお前の趣味だろ?今日はお前が弄ってやれ。明日は巽に引き継ぐように」
「趣味ではないのですが…分かりました。ですがどのように?」
「巫女様は悲しみながらも前を向いていると。兄はきっと生きていると信じて日々過ごされている…という感じでアナウンスをすれば周りは勝手に脚色するだろうさ」
脚色前提なんだ…
「職員の目からそう見えた…ということですね、分かりました。自分宛にも何件か来ていたので一番仲の良いと思っている連中にリークしておきます」
「午前中で頼むぞ」
「えっ?」
「午後は岩崎の配信があるだろ…それまでにそれっぽい情報が出回っていれば相手は反応する」
「…分かりました。しかし、ダンジョン勢の協力者ッスかねぇ…」
「それにしては世界規模でメディアが動きすぎている。出来ればそれも聞いてくれ」
無茶振り…ではないのか西脇さんは頷いた。
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