12話 TS化した僕「来ちゃった」される

 グラスに入っていたお酒が全てなくなった事を確認し、グラスを下げる。

 お酒もそろそろ無くなるから、明日帰りに酒屋さんいこうかな。

 グラスを洗い、片付ける。

 微かな機械駆動音以外の音はない。

 あ、そう言えば。

 カバンからこの物件の資料とカードキー2枚を取り出す。

 お隣というか向かいの部屋は異界化しかけているっていう話だったけど、詳細ってどうなっているのかな?

 観察記録、今日からつけてみようかな?

 元の状態が分からないと何も言えないし、ちょっと見るだけだから…

 僕は衣装モードを修道服へと切り替える。

 カードキー2枚持った。筆記用具とメモ帳持った。会社支給のスマホも持っている。忘れ物はない。

 よし、まずは覗いてみるか!

 僕は部屋を出て向かいの部屋へと歩を進めた。



 扉に問題は無さそう。さっき見たまんま。

 だけどなぁ…何というか、違和感ではなくてこの感覚、知っているような…

 この気配。何かに包まれているような、うーん。

 とりあえず開けてみよう。

 僕はカードキーを使ってロックを解除し、ゆっくりと扉を開けた。

 と、

「来ちゃった」

 ナニカガイタ。

 そっと扉を閉める。

「待って!私ここを用意するのにかなり苦労したのにその反応は辛いの!」

[いやどちら様!?というかどちら神様!?]

「分かってるのに聞くの!?」

[何やってるんですかユル神様!]

「ユル神って言った!ゆるキャラ神扱いした!」

[神域から出られないし、力をかなり消費していて尚且つ忙しいんじゃないんかい!]

「忙しいよ!今だってスキルランクアップと職業ランクアップのアナウンスを数百名にしているし!」

[神様が有能すぎて怖い]

「えへへ…褒められちゃった」

 はい可愛い。天然なのにあざと可愛い。

 小柄でちょっと幼い顔立ち。

 髪は肩より少し長い位だけど緩いウェーブがかかっている。

 あとお胸が大きい。言い方は悪いかも知れないけど、ロリ巨乳?って感じ?

「あ、ここじゃなんだから中に入って入って。この部屋は神域として設定できたし、ゆーちゃんの部屋と間取りまったく一緒だったからコピったから違和感ないよ!」

 何やってんですか神様ァ!



「軽率だぞ?君のその迂闊な行為と可愛さにどれだけハラハラした事か分かるか?」

[面目次第もありません…]

 ───ゆる神様に捕まって部屋に入って1分経たずにキャリアウーマンみたいな美女神様にお説教を受けている件について。

 キャリアウーマン美女神様もスタイルの良い方です。でもスーツ姿。何故スーツ。

「いやその可愛い顔はずっと見ていたいよ?」

「それは私も同じだが、黙れユル神」

「みっちゃんにまでゆる神扱い!?」

「ユグドラシル神だから略してユル神で良いだろう?」

「私の事を忘れて勝手にやってるあんな世界は良いの!」

「自分否定しやがった…余程疲れているんだな」

[あの、僕のキャパシティを大きく越える内容のお話しをされているんですが…僕が聞いても問題無いんでしょうか]

「問題無い。むしろある程度はこの世界に通達しなければならない事なんだが、この世界の神々の半数以上が身動き取れない程弱っているとは思わなかったぞ…」

 険しい顔でため息を吐くキャリアウーマン女神様。

[えっと、ちょっと関係者に連絡しても?]

「そうだな。面倒事は早めに終えるに限る」

「その後でゆーちゃんと飲み会だ!ゆーちゃん私達にはお酒くれるのに自分では飲まないし」

 ───来てもらうついでに、お酒もお願いしておこう…


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