11話 TS化した僕は戸惑いまくる
引っ越しは一時間程度で完了し、前の部屋で使っていた家具家電はほぼ捨てる事になってしまった岩崎友紀です。こんばんは。
巽さんは処分と返却及び報告をするからと協会に戻りました。
そう言えば巽さん夜勤だったね!と、本気で忘れていた辺り僕は駄目だなぁ。
ものすごくお高そうなソファーにもたれてしばし呆然。
───さて、極めて重要かつ危険な現実と向き合おうか。
それは
おトイレとお風呂の問題です。
トイレはね、不思議と行きたくないと言うか生理現象たる排泄欲求が全くない。
だからといっていつまでもそうとは限らないわけで。
さらにお風呂。
僕がこの美女の体を洗うの?僕だけど。僕の体なの?
適当に洗って大丈夫…なわけないし!
とりあえずお風呂場に行こう。話はそれから…あ。
服と下着問題もあった…マジでどうしよう…
びっくりした。ものすごくビックリした!
とりあえず自分の部屋だしシャツとかは自分のものを羽織る程度にして、下着は洗おうと思ったら、服と下着が消えました。
ブラジャーを外すのに時間がかかったのは秘密で。
それよりも色々諦めてお風呂に入って、十分過ぎるほど堪能してさああがろうかと思った時、視界の端に『コスチューム追加のお知らせ』というお知らせポップアップが現れた。
こんな機能あるんだと思いながら確認をすると、普段着(パジャマA)が追加されていた。
神様!見ているな!?
本当に何から何までありがとうございます。
できれば男に戻して欲しいのですが…
───返事がない。何か忙しいようだ。
という一連の脳内小芝居を行い普段着(パジャマA)を選択。
男女兼用っぽいけど、ピッタリフィットしたパジャマと下着を一瞬で身につけられた。
これ、換装っていっていいかなぁ。
兎も角、あまり女性物!って感じがしないパジャマをセレクトしてくれた神様に心から感謝をし、寝室へ向かう。
まだ寝ないけど。
寝室に行き元の自宅に設置していた冷蔵庫を開ける。
その冷蔵庫から日本酒とウイスキーを取り出し、応接間のテーブルに置く。
キッチンキャビネットより江戸切子とウイスキーテイスティンググラスを取り出し、それぞれにお酒を入れる。
「いつも私達を見守って戴きありがとうございます。昨日は御神酒を捧げられず申し訳ありませんでした」
テーブル対面側二カ所にそれぞれグラスを差し出す。
僕の日課を行い、小さく息を吐く。
───私達の力がどんどん失われている。
神様は以前そんな事を仰っていた。
これが何を意味するのか穿った見方はいくつかできるけど、確証はない。
僕にできる事は神様方に常に感謝を捧げる事くらいだ。
ダンジョンの攻略は遅々として進んでいない。
利益があるから攻略しない。それもあるけど、上層くらいしか攻略できない状態である。
原因は上級探索者や上級職が相次いで殺害された事が理由だった。
しかもそれは世界中で起きた。
結果、ダンジョン攻略が滞り、ダンジョン崩壊によって世界数カ国では都市を放棄するレベルの被害が発生しその都市にはミサイルの雨を降らせ何とかモンスター放出だけは抑えられたという。
要はモンスタースタンピードだけが抑えられただけで、ダンジョン崩壊は不完全のまま未だにそこにあるという最悪の状態で終わってしまった事件が複数件起きた。
ただそれ以上に危険な物が姿を現した。
それが呪いであり、世界から姿を消していた過去の怨念や妖怪。
ダンジョンモンスターとしてのそれではなく、口承や伝説等に近いモノ。
上級探索者であっても対策していなければ為す術なくやられてしまうというそれらがダンジョンの奥底から姿を現している。
宮内庁ダンジョン崩壊事件。
これは世界で唯一ダンジョン崩壊を完全に終わらせた事件として教科書に載っている。
その事件にもそれらが関わっているというのであれば、今世界は薄氷の上にあるのかも知れない。
ただ僕にできる事は祈る事と助けを請い願う事。スキルを使い他者を癒やす事くらいである。
致命的な運動音痴と非力さに「いやお前絶対に性別間違ってるってマジで」と言われるくらい攻略には向いていない僕ができる唯一できる手助けがそれだ。
───まさか神様。昔の幼馴染みとの会話を聞いてたとか、ないですよね?
神様方に捧げたお酒はグラスの半ばまで減っていた。
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