14話 TS化した僕は神代の戦いを見る
割り箸が勢いよくお団子に下ろされ、誰かに弾かれる。
なのに何故『ギィンッ!』『バジッ!』って音がするんだろう。
そしてお三方の右腕が見えないのは漫画のように高速で動いているから?
僕は今、【リアルで無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きというのを人以上の存在がやってみた】というコンテンツを見ている。
一応取り皿も持っているんだけど、それ以前の問題だ。
「力の大半を失っても払いを司る神。そう易々と取らせはしないっ!」
───こんな低レベルの争いで名告りを聞きとうはなかった…
祓戸大神って複数人数で大体女性じゃなかったの!?
「外に人がいるな」
第一次お団子戦争に敗北した祓戸様(そう言うようにと言われた)が不機嫌そうに呟いた。
連絡してから数十分経っているので来たのかな?
僕は急いで玄関へと向かう前に防犯カメラを確認。
課長と何故か完全武装の巽さん達だった。
[開いてますよー]
僕がインターホン越しに声を掛けると課長がピクリと反応した。
「───失礼する」
そう言って部屋に入ってきたと同時に、
「っ!?」
課長は一歩目を踏み込んだと同時に左手を広げ、何かを遮るような仕草をした。
「へぇ、なかなか分かっている人間もいる」
祓戸様が面白そうに言う。
何をしたのか分からないけど、格の違いを見せつけたって感じかな?
「分かっていない子が一番理解している件について」
「ゆーちゃんだし!」
[酷い!あ、課長。後ろの方々も武装は解除して入ってください。あと、お酒とかは…]
「ああ、持って来た」
[良かった…祓戸様お腹すいてて機嫌悪いから…]
「僕機嫌悪いわけじゃないからね!?」
[…えっ?]
「うわぁ…本気でそう思ってそう」
そんなやりとりをしている中、落ち着きを取り戻した課長達は武装解除をして全員部屋に入ってきた。
課長と巽さん以外は未だに顔色が悪い。
「まさか異界化ではなく神域化するとは…」
「本来であれば異界化していたけど、私達が介入し制御を乗っ取ったのよ。その子のために」
[あ、これとこれですか。重っ!…スミマセンがこれは向こうのテーブルの上に…無理であればキッチンテーブルの上で]
「岩崎のため、ですか」
[これは日本酒に対して、これはウイスキー…飲み合わせを分かってらっしゃる]
「本人ほとんど飲まないのに満面の笑みで仕分けしてるぅ」
「…この神域で動くのも結構な気力が要るのに平然と…流石姫巫女様」
「俺、どっちの岩崎でも惚れる。惚れた」
「清楚なシスターの笑顔、守りたい」
「───あ奴等、大丈夫か?信用できるのか?」
「末期と中度の岩崎信者ですので問題は無いかと。岩崎、済まないが使えないその三人と巽を使って神様の食事を頼む」
[了解しました!]
僕は再びキッチンに戻って買ってきてもらった食材で何品か作る事にした。
SIDE:課長藤岡
「話を戻すけど、ぶっちゃけ幾つもある可能性からここに来るよう色々手を回してたのよ」
スーツ姿の女神は僅かに口角を上げて答える。
「私の感じた違和感もそれでしょうか」
「ええ。貴女が確認で来ていたのも知っている。異界化に対してそこの神、祓戸の大神と呼ばれる祓いの力を使い均衡状態にし、あの子がここに来たので一気に掌握した」
事もなげに日本の神名が出たためギョッとした私は慌てて水干姿の少年を見た。
「祓戸大神!?お、お待ちください!かの神は四柱のはず…」
「僕の事?ああ、役割によって分けて記されたりするからねぇ。でもまあ、別れる事もできるし。あ、ただ今現在は大分力を使っているから無理だけど」
祓戸の大神はため息を吐いて小皿にある団子をつまむ。
「異界化を止めるために、でしょうか」
私の台詞に祓戸の大神は馬鹿にしたように鼻で笑う。
「違う違う。人間達が僕らを蔑ろにして、しまいにはリターンもなしに邪な願いばかり数百年もしてきた結果、ほとんどの神は毒を受けたような状態でね。神職者ですら僕らの存在を否定しながらお勤めをしているのが多数だ。これじゃあ僕達は兵糧もなしに戦いをしているようなものさ。神託を下しても信じず、神託を信じ神官に告げても精神病と言われ非難され口を噤む。それに呆れてとうとう神々はこの地を離れはじめているよ」
「………」
絶句。その一言に尽きる事実に頭が一瞬真っ白になった。
「最近、神聖系や回復系の祝福やスキルが減っていると同時に効力が落ちてきていると聞いた事は?」
スーツ姿の女神の問いに私はようやく起動し始めた頭を酷使して記憶を辿る。
「…何度か。少し落ちていると報告はありました」
「祝福…職業というものは神の祝福であり、その者の適性に対して担当した神が適性より最も適した職業に対して祝福を与えるのよ。そしてスキルはモノによるけど、その者の持っている力に担当した神が神力を僅かに混ぜる事によって効果を乗倍にして発揮させるのよ。なのに職業もスキルもダンジョンのシステムだ。ありがとう。神様は何もしてはくれないなんて言われて力を貸すと思う?」
その言葉はほぼ全ての者に向けられた言葉であり、深く受け止めなければならない言葉だった。
ダンジョンができ、暫くしたのちに職業やスキルが発現した。
そしてそれはご丁寧にも我々を導くように説明もしてくれた。
「神の力だと言わないのが悪い」と言う者も居るかも知れないが、そう神託を受けて発言すれば「狂信者」や「少しおかしな人」扱いをして封じられてきたのだろう。
いや、権力者側の一部はこの事実を知っているかもしれないが、利権等の前に黙殺する道を取ったのかもしれない。
まあ、と少し難しい顔をした女神は私の顔を見る。
「貴女、神の試練を受けたことあるんじゃない?そして乗り越えている…神の助力無しで既に上位クラスの力を有している。この世界って、このクラスの人がゴロゴロしてるの?それなら何とかなるかもしれないけど」
その瞬間、神々と岩崎以外全員が
『いえ、こんなリアルチートは5人といません』と一言一句違わず同時に言った。
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