520話 先手、暴動? 後手、三段仕込み
ゆる姉様が帰ってくるのを待つ間、なんだったら時間つぶしにとせお姉様にスタジオへ呼ばれた。
全員。
いや待って?なんで全員?
「えっ?みんなで楽しく反省会的な?」
「その姿でそのノリというのはちょっと…」
「真面目にやった方が良い?」
控えめで頼れるお姉ちゃんに見えたんだけどなぁ…せお姉様の今の姿…
「あっ…」
えっ?なに?
「伊都子ちゃんこっちに来て!」
この神様とうとう伊都子さんをもこき使うように!?
「あの、失礼します」
───なんで伊都子さん僕を見るといつもキョドるの?
「どうだった?」
せお姉様はすぐに伊都子さんへと問う。
「生卵まみれの車が数台、迎えに来ていました」
えっ?
「まあ、それくらいは許容してあげようよ…ねぇ?」
【民意でボコボコにするので今はポコポコ位で勘弁してやる!】
【本当に、何がしたかったのか分からないままやね】
【爆破したら駄目なのか…】
【一応しかけるだけしかけておくってのは?】
「おい?なんか過激派がいるんだが!?」
「ああ、気にしないで戦場で戦いながら見ている視聴者もいるから」
磯部さん。慣れて?
少し憐れみの目を向けると睨まれた。解せぬ。
「で、アイドルの…」
「澪と申します。祓戸の神様」
「澪ちゃんね。と、マネージャーはどうするの?」
「最近ストーカーや怪しげな手紙がたくさん届いていましたし、社長がちょっと問題ありでしたので…何もかも捨てて巫女様に仕えようかと」
「私も同じく巫女様に仕えたく…」
二人とも神様方に仕えるのではなく、僕にって…いやそれはちょっと…
そんな僕の気持ちとは裏腹にせお姉様の面接?は続く。
「お料理出来る?」
「私は人並みには…」
「私は昔居酒屋で厨房スタッフなどをしておりましたせいか、その類しか…」
あっ…
「ヨシ採用!二人は暫くの間1階食堂で努めて貰って、飲兵衛神々を殴りつつ料理の腕を磨いて!住居は…伊都子達と同じフロアで」
やっぱりぃぃぃっ!!
「ただいまぁ…愚痴られてきたよぉ…」
せお姉様がマネージャーさんと居酒屋メニューで盛り上がっている中、くたびれた感じのゆる姉様が戻ってきた。
「上では大騒ぎになってたよ…クッキー持っていったら「これはありがたいけど、あの子に作らせたんでしょ?この大変な時に…」なんて言われたよ」
そりゃあそうでしょ。
「ゆる姉様。戻って来て早々申し訳ないんですが、この方々への忠告って?」
僕の問いにゆる姉様は「あ~…」と言い、せお姉様に配信を任せ、再び隣のスタジオへ移動することとなった。
「まだ他の人には聞かせるわけには行かないからね」
そう前置きし、ゆる姉様が語り出す。
どうやらメディアのやらかし含め、不穏分子をあぶり出したかったらしい。
他にもこの国の状況や宝の持ち腐れ状態な様々な現状を僕のために整理し直すことを数日前にミツルギ姉様と話し合ったらしい。
結果、
1.諜報機関及び妖魔特化の組織(私設)の設立。
2.ダンジョンに与する不穏分子や僕を邪魔だと思っている危険分子の洗い出し。
3.新拠点の確保
以上の三つを同時並行に行うことになったらしい。
で、1に関しては中務省の神託の間を通じ確認をしたところ、東家と西家の一門が状況を見て離脱することを了承。新組織へ移るらしい。
そしてその事に関しては事前に総理には伝えてあるらしい。
更に、僕が知っている人の組織?もこの組織に合流するらしく───
「この5人がそこの工作員」
「工作員ではありますが、歴とした記者でもありますので…」
苦笑する記者さん。
「お嬢…若菜お嬢様の命により今回報道班として潜入致しました。あの記者等と本社とのやりとりが偶然カメラに入ってしまっていたようで、今頃は大騒動になっているかと…」
にこやかに言う記者さんに僕は「ああ、若菜お姉さんかぁ」と納得してしまった。
「総理も、知っている…?」
そして呆然とする磯部さん。
「知っているよ。中務省は即時解体だけど、外部委託を受けるから基本あまり変わらないと思って」
「えっ?」
磯部さん、ゆる姉様の台詞に固まった。
「で、新拠点は太平洋ど真ん中に小さな五つの島を用意するから。
不穏分子達が本気で何かしようとしたら選別してそこに転送隔離とか、拠点作って本当に国として機能させてしまえばゆーちゃん正式な外交官になれるし…
いやぁ、良いタイミングで須佐之男君が来てくれて良かったよ。手が足りなかったから今快く手伝って貰っているんだよ」
笑顔のゆる姉様。
───あの時、男神達に連れて行かれたのって…強制労働確保だった?…いや、時期的に違うか。
でも伊邪那美お母さんが忙しいのも含め神様方があまりいない気がしたのはこれのための準備だったのかな?
あまりの情報料に僕の頭はオーバーヒートしそうだった。
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