952話 ゆるとせお 仲良く喧嘩しな


 神域に行くと、ゆる姉様とせお姉様が喧嘩をしていた。

「私は!?私も行きたかったの!」

「僕は関係者経由で行っただけなのですよ!?ちょうど牛の手配がっだだだだだ!」

「ず~~~~る~~~い~~~~~っっ!」

 ゆる姉様が一方的にせお姉様をいじめている気がする。ほっぺ引っ張って…

 ───うん。スルーしよう。


「アイスおいひぃ」

「……この邪神、本気で日本に慣れ親しみすぎて帰るの忘れてないッスか?」

「それ、貴女の元上司でしょうが…」

『おいしいね!』

「んっ!お手伝いして貰ったお小遣いなの」

『ハヴァスターイおねーちゃんすごい!』

「なんっ、だと!?…あの働いたら敗北とまで言い切ったハヴァスターイ様が!?ここマジで邪神矯正施設ッスか!?」

「タイム、顔、顔劇画調になってるわよ」

 リビングではガチでお姉さんムーブしてマイヤにアイスを食べさせているハヴァスターイ様とそれを見て愕然としているタイムさん、そしてそれにツッコミを入れているフィラさんが居た。

「ここにも居ない…1階かな?」

「誰か探しているんスか?」

「天之御中主様居ないかなぁと」

「1階の食堂だと思うッス。あ!自分も一緒に行くッス!」

 タイムさん、護衛という事を忘れてないかな?

 神域を出て1階へと向かう。

 エレベーターに乗り込むとタイムさんが口を開く。

「ご主人。今後の予定はどうするんスか?」

「今後の予定?」

「そうッス。今後の行動指針を───」

「今まで通りだよ?仕事をして、配信をして、神様方のご飯を作って箱庭でみんなと仲良く遊んで…」

「ダンジョンはどうするんッスか?」

「?今まで通りだよ?」

 1階に到着し、扉が開く。

「相手が仕掛けてこないのなら僕が何かする必要は無いし、僕は基本ダンジョンには入らない」

「ご主人のお父さんの件はどうするんスか?」

「アレは…放置。こちらから行っても喜ばれるだけだよ?」

「まあ、そんな感じッスね」

「今やるべき事をやっていかないと…さしあたっては箱庭のことと、この世界の未来について」

 食堂に入ると、人間1割、神様方9割の店内はなかなかにカオスだった。

「おおっ!巫女様じゃねーか!」

 大山祇様が入口に立っていた僕を見付けて声を上げる。

 その瞬間に店内がザワリと反応し───

「騒いだら出禁ですよ?」

 ウェスタ様のその一言で瞬時におさまった。

「大山祇さんは明日から1週間出禁ということで」

「待ってくれ!マジ勘弁してくれよ!ここの食事お土産に買って帰らないと…」

 うわ、呑兵衛オヤジの懇願は見苦しい…

 ソッとスルーして天之御中主様の所へと向かう。

「?何か?」

「少し確認したいことがありまして」

「確認したいこと?」

 首をかしげる天之御中主様。

「箱庭に、入れますか?」

「1、2回だけなら進入は可能だろうね。短時間だけだろうけど」

 やっぱり!

「これは…セキュリティ強化が必要かな…」

「こらこら。今でも上位世界の神すら入れないセキュリティなんだから」

「でも天之御中主様は入れるんですよね?」

「私は君との繋がりと、君の保証人としての格があるからだよ。この2つがあっても持ち込みOK持ちだしNGな厳しさだよ?まあ、出来てあと1回かな…あの世界に必要な物は全部送り込んだと思うし」

 そう言って苦笑し、芋焼酎のお湯割りを飲む天之御中主様。

「いや、天之御中主様であれば普通に許可出しますよ?何も悪いことしそうにありませんし。あと、伊邪那美お母さんとか」

「あー…あの子は厳しいかな。あの世界は毒にしかならない」

 その言葉に僕はああやっぱりと頷いた。


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