338話 6dayPM~発覚。そしてボーナスタイム

 SIDE:世界


「なんだと!?邪神像が奪われた!?」

「はい。直後、周辺全てのバケモノどもが邪神像に誘われるように集まり、周辺からいなくなったと…」

「アレを封印するために我々は最上級の探索者部隊と聖職者を失ったのだぞ!?事の大きさを分かっているのか!?それにあの周辺には警備隊がいたはずだぞ!?」

「警備隊は全滅していたようです」

 大統領がテーブルを叩く。

 しかし補佐官はいまいち分かっていないのか軽く首をかしげただけだった。

「───この国は滅びるぞ」

「いやそこまでは…」

「104,251名。この数が分かるかね?」

「?いいえ」

「その悪魔によって抹殺された都市の総人口だ。逃げることもできず全て皆殺しだった。そして最上級の探索者部隊と聖職者ら全てと引き替えに邪神像に封印したのだ」

 大統領に言われ、補佐官はとある事件を思い出した。

「…湾岸観光都市の…」

 しかしアレはモンスターのスタンピードだという話だったはず…

「悪魔一体で、都市が?」

「ああ。しかし我が国最後の聖者が生きているならまだ望みがある…邪神像を封印していた館の側に住んでいる占い師…マリア婆さんであれば」

「………」

 補佐官の顔色が悪い。

「まさか…」

「強盗に、殺害されていました」

「神よ…奪った連中は分かっているのか!?」

「い、いえそれもまだ…」

「至急調べろ!その拠点から半径300km圏内にいる住民に避難命令を出───」

「報告します!たった今動植物保護区域にて爆発戦闘音が聞こえたとの報告がありました!」

 恐らくは探している邪神像を奪った連中だろうと察しは付いた。

 そしてその地域にいる連中が誰なのかも。

 最後の聖者が殺された時点で封印は完全に解かれているはずだ。

「………大至急保護区周辺の住民へ避難するよう、できるだけ遠くに避難するよう緊急避難命令を出せ。邪神像が盗まれ、封印が解かれたようだ」

「!?畏まりました!」

「…内部の洗い直しをしないといけないか…再び数十万人の死者を出すような蛮行の手引きをした人間を国民の前に出さねばな」

 大統領の呟きを背に受け、補佐官は蒼白な顔を見られぬようにしながら警護兵と共に執務室を後にした。



 SIDE:藤岡課長



「これは───」

 一口の日本刀を手に感嘆の声を上げる。

 抜き放つと神気を帯びたその刀は神が創り出したとすら思える代物だが、恐らくは人が作り出した最高の物を奉納したのだろう。

「片落互の目…僅かな反り素晴らしい。これより宜しく頼む」

 刀にそう声を掛け納刀するとプライベートボックスへとしまう。

「さて、次は……」

 そう呟きながら取り出した物は、抱き枕だった。

「………ん~~~~!」

 ガマンできずに抱きつく。

 アブノーマルA姿の友紀がプリントされた抱き枕。

「はぁ、可愛い…愛でる。護る!大きな友紀も小さな友紀も良い…」

 他人に見せられないくらいだらしない顔になっているという自覚はある。

 でもそれは仕方ない。

 こんなに可愛いのに?

 プライベート空間くらい全力に気を抜かせて欲しい。

「はぁ…好きぃ…」

 ギュウッと抱きしめる。

「……温かい…癒やされる…」

 今は仕事のことや細かなことは考えたくない。

 抱きしめながら悶えていたが、次第に微睡みに身を任せ眠りについた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る