829話 今そこにあるはずの危機

 SIDE:神域


「廣瀬〜!神々の内乱や人間との関係破壊工作含め戦犯がようやっと分かったよ!」

「えっ?何事ですか?」

 廣瀬が神々と相談をするためにマンション神域へ入ったと同時に祓戸神に言われ何事かと身構えた。

「北欧神含め現在分かっているだけでも16の神々が戦犯だったよ」

「ロキとかオーディンとか確実に戦犯ですよね?」

「…なんでわかるの?」

「いえむしろなんで分からないんですかね?」

「疑わしくても証拠がなかったら…何もできないし」

 困ったようにいう祓戸神に「ああ、力関係で黙殺されていたんだな」と察した。

「と言うことは証拠が出てきたんですか〜?」

「うん。キュクロープスが証拠とともに証言してくれたよ。ロキが仲間に引き込むために色々教えてくれたみたい」

「それはそれでどうなんですかねぇ?」

「どうせ周りに言っても信じてくれないだろうって。姿留めの水晶置いているのにペラペラ喋っているよ」

「姿留めの水晶?ビデオみたいなモノですか?オーディンの場合は更なる知を得るためでしょうけど、主神自体がそれでは…」

「そそ。全方位ビデオカメラみたいなもの!ってあれが主神ではないからね!?実際の創造主は別にいるからね!」

「それでも現在任せている神ですから主神ですよね?」

「…そっスね。それ言われちゃうと僕としても何も言えないよ…」

 落ち込む祓戸神に中間管理職の悲哀を感じながらも廣瀬は声を掛ける。

「祓戸様。二面保証について全世界に伝えた方が良いのではと思うんですが~」

「…もう、神々に喧嘩を売っている人間もいるし、良いかなとは思うんだけど…言えない状態になっちゃったんだよねぇ」

「えっ?」

「あの黒い杭、神界のギリシャ地区をぶち抜いていてね…今全力で戦争中なんだ」

「えっ!?」

「審議の石板設置点は神界とも関わっているけど…そこを狙われたというか、まだ裏切り者が潜んでいるって分かった訳なんだけどね」

 自嘲気味に笑う祓戸神がそこまで焦っていないことに廣瀬は首をかしげる。

「一気に攻められるとマズいのでは?それこそ上位世界のモンスターなどを入れられたら…」

「そこら辺はユグドラシル様とミツルギ様が先にフィルター処理をしているから化け物クラスは入って来る事が出来ないよ。それにあの配信でストレス溜まりまくっていた神3名が喜々として戦っているから…」

 ああ、あの…

 自業自得とはいえあの酷い配信で完全に駄目親父、サイコパス、ヤンデレ姉ラブのレッテルを貼られたお三方のことを思いだし半笑いする。

「今、神界からライブ配信しているから汚名は少しくらい返上できるといいなぁ…無理だろうなぁ」

「無理ですね」

「だよねぇ~」

 バッサリと言葉で切り捨てる廣瀬に祓戸神はため息を吐いた。

「全世界に伝える際は神々の口からお願い致します。ただ、友紀くんへは私の方から伝えますが…宜しいですか?」

「……そこは任せた」

「承りました~」

「なんでそんなにアップダウン激しいのさ!」

「一応釘は刺しておかなければと思いまして」

「もう刺さりまくりだよ…僕じゃ無くて他の神に刺してよ…」

 泣きそうな顔の祓戸神に廣瀬は「窓口は諦めてください~」とにこやかに言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る