610話 姉さんと、お夕飯


 暫く「殲滅型」か「補助要員」かで言い争っていたけど、佑那の耳元で「ほーじょ、ほーじょ、ほーじょ」って言ってたら涙目で、

「兄さんは、補助要員でいいからぁ…これはやめてぇぇぇ」

 って涙目で言われた。解せぬ。


 スタジオに入ろうか迷い、箱庭へと向かった。

 理由はご飯の作り置きと、おにぎりの作り置きをしたいから。

 あと、お味噌とか作りたいなぁ…でも時間掛かるよなぁ…

『パパー!』

 マイヤが少し慌てて飛んできた。

「マイヤ?どうしたの?」

『ラヴィおねーさんがお料理作るって!』

「お腹すいたのかなぁ…足りなかったのかなぁ…」

『わかんない』

 僕たちは台所へと向かう。

「あ…」

 ラヴィお姉さんは僕を見ると少し気まずそうな顔をした。

「お腹がすいたのなら冷蔵庫にあるのに…」

「いや、そうじゃなくて…料理を作ってみたくなったのよ」

 少し恥ずかしそうに言う姉さん。

「世界的な機材の違いとかは?」

「何年貴方と同化していたと?」

 自信満々に宣う姉さん。

「まあ、そうなんですけど少し違うだけで色々手間取るものですよ?」

 多分聞き入れてくれないだろうなーと思いながら一応一言。

 あと、フラグをこれ以上───

「大丈夫大丈夫イケルイケル!」

 いやそれフラグぅぅぅっ!



 メシマズフラグはは回避した模様。

 半分は。

 ただ今僕が実食中。

 ラヴィお姉さんは少し味見。

「あるぇぇ?」

「姉さん…」

 お姉さん的には想像と現実の味に大きな乖離があった模様。

 そりゃあそうですよ。

 塩をひとつまみと小さじ一杯の違いは結構差がある。

 何せ塩ひとつまみと言っても0.5g~1gとばらつきがあるし。

 それを小さじでやったらあーた…6gですよ?

 そんな感じで分量は記憶頼りでやるし、慣れない器具を使おうとするから…

 不味くはない。ただ、味が濃い。

 素材の味と言うよりも調味料の味…と言うレベルまではいかないギリギリの所。

 美味しいかと言われたら、うん。まあ、美味しいよ?味濃いけど。

 味濃いけど。

 凝った料理しなければ問題無いと思う。

「おかしい…思ったより美味しくない…」

「姉さん。これはこれで美味しいよ?味濃いけど」

 考えてみたら僕、人の手料理ってそんなに食べたことない…

 外で食べるとかはあるけど、家で人の手でって…静留さんは数回程度であとは兄さんくらいかなぁ…昔々はお父さんだけど。

 うん。それくらい。

「無理に調味料を使わなくても良いと思うよ?」

 あとレシピ通りに。

 と、ここで気付く。

「あと1人分余分に作っていたら…」

「あ、そっか…私3人分のレシピを使ってるのか」

「いや、塩ひとつまみの所を小さじ1杯だからそこは記憶違い」

「あれぇぇぇ!?」

 お塩以外は多分そうかも知れな…イヤやっぱねーわ。

 これ1人分だし。

 醤油も分量間違えているし。

「でも、うん。姉さんが作ってくれるご飯…」

 なんかちょっと嬉しい。

 食べながらも未だにぶつくさ言っている姉さん。

「絶対ク〇クパ〇ドのレシピが間違って…」

「そこは個人差があるからね!?あと絶対姉さんみたいに増塩レシピでは無いと思うよ!?」

 自分の思い違いを人のせいにしてはいけませんっ!間違いは間違いって認めましょう!これ、大事。


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