371話 緊急と終了
SIDE:世界
「いやぁ…どうしようもねぇな」
半笑いで煙草をくわえたまま迫り来る見えない何かに向けて発砲する。
「隊長!やはり通常の弾丸では通用しませんっ!」
援護射撃を行っていた仲間の軍人が叫ぶ。
現在この場にいるのは2人のみ。
バリケードはとうの昔に破壊され尽くしているが、唯一の救いは敵の数だった。
たった1体。
しかしその1体がこの前線を放棄せざるを得ない状態にした存在であり、部隊の3割はコイツに食われた。
残りは必死に撤退の準備を進めている。
隊長と呼ばれた男が発砲した時だけ見えないデカブツの動きが止まる。
「かといってこの弾丸でも通用しているとはちょっと言いづらいんだけどねぇ!?」
S&W500から吐き出された弾丸は虚空で弾ける。
「完全に火力不足だな…遊ばれている」
「あと7分は保たせてください!それまでには撤収が完了します!」
「無茶言ってるって自覚在るぅ!?」
「無茶でも何でもやって下さい!アンタ隊長でしょう!?」
「副隊長さん、前線送りの大尉に期待しないでもらえますぅ!?しかもこれなけなしの私物だよ!そろそろ弾薬も尽きるし、銃自体限界がきている!」
見えない腕の攻撃を避けつつ、弾丸の装填を行う。
『───つまらんのぅ…飽きたわ』
そう聞こえた瞬間、
「後ろに跳べっ!」
隊長が叫び、言われるがまま、副隊長が後ろへ勢いよく跳んだ。
それと同時に副隊長のいた所が大きくえぐれた。
『ふむ…見えておるようだの』
詰まらなさそうな声が辺りに響く。
「…ああ、巨大なドクロがよく見えるよ」
隊長の台詞にソレが姿を見せる。
ソレは巨大な人骨だった。
ただ、頭蓋骨が異様に大きい。
『ほれ、撤退まで待ってやるぞ?まあ、後を付いて行き喰わせてもらうが』
「デスヨネー」
「!?」
分かっていたのかため息を吐く隊長と「まさか!」と言う顔の副隊長。
少し考えれば分かることではあるものの、それに気付けぬほど追い詰められていることの証左でもあった。
「───覚悟して、使うか」
「隊長?」
範囲は、恐らく問題無いだろう。
「神よ、いや巫女様よ、使わせて、もらうぞ!」
隊長は巨大ドクロ目掛けて駆け出す。
『ほう?』
戦力差、攻撃が通じていないと分かっていながらの突貫攻撃に巨大ドクロは興味深そうに隊長を見る。
しかし、次の瞬間隊長は破魔の力を有する何かを手に、ドクロの眼前まで迫っていた。
『!?』
「固定されて…いろっ!」
ドクロの眉間にその何かを貼り付け、蹴りを浴びせて距離を取った。
『お?おおおおおおっ!?これ、は!?』
眉間の何かが光り、そこを基点に薄い光の繭がガイコツ全てを包む。
『あ、ああこれは!神は既に居らぬはず!何故!な───』
ドクロが叫ぶのを遮るようにソレが一際光り、閃光弾を撃ち込まれたような状態となる。
やがて光りは収まり二人が目を開けた時にはそこにあの巨大ドクロの姿は無かった。
「───隊長。あれは」
「アンケートの景品だ。神特性のな…いや、弱破魔効果じゃないだろアレは…」
「どうしてもっと早く使わなかったんですか!」
「阿呆が!あれ自体は貼った所を基点に20mの6時間の弱破魔効果だぞ!?あんなバケモノ相手に効くとは思ってなかったんだよ!しかも全世界で400枚しかない稀少品だぞ!?出し惜しみするわ!」
「部下どれだけ死んだとお思いですか!?」
「だから効くなんて思わなかったんだよ!弱だぞ!?ゾンビどもに効く程度だという認識しか無いわ!」
ギャーギャー言い合う二人に撤退準備完了の報告のため駆けてきた兵が止めに入るまであと1分───
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