372話 解説と配信
「はいコメントを雑に読んでいくよ!…なんか感謝のコメントが来てるんだけど」
ユグドラシルが不思議そうな顔でピックアップして表示する。
『ステッカーを戴いた通称戦闘ニキです。
このステッカーのおかげで前線は壊滅せず3割の被害で済みましたありがとうございます。
ただ、建物ほどの大きさのガイコツに対して隔離できるかと決死の覚悟で貼り付けたら相手消滅してしまったのですが、どういうことでしょうか』
「と言うことだけど制作者~?」
「はいよ…疲労マックスな制作者だよー」
「これ、どういう事なん?」
「無視ですか。んー…はじめから高出力だったとか、そういった事ではないよ?設定は弱破魔。ソレが20m展開されて6時間は保つ…ここ重要。
普通の攻撃を受けていた場合なら6時間は保つ計算で作成されているんだよ。それだけのエネルギーをステッカーに込めているって訳。それを敵に貼った場合はその侵食に対して対抗できるだけのエネルギーを消費したってわけ」
「ソンビ換算何体分?」
「えっ?14400体分。一方から10体で攻めてこられた想定で1分間に40体、1時間で2400体で算出してやったよ?だから凄い疲れたんだ…」
配信中にもかかわらずテーブルに突っ伏す祓戸。
「……常識って、知ってる?」
「勿論だよ!そんな数いるはずないって言いたいんですよね!?いたらクレームじゃないかぁ!メイドインジャパンを舐めるなぁ!」
ガバッと上体を起こし、ユグドラシルに吼え、再びテーブルに突っ伏した。
『流石安心と信頼のクオリティ』
『神様自らメイドインジャパンの誇り持っていて偉い』
『失墜したと思っていたジャパンクオリティはまだここに在った!』
『でもソレで神様お疲れってのは拙くね?』
『ソレで助かった人がいるんだぜ?』
『神様判断の”弱”と思ってたのに』
「…一気に出力する作用を安定出力に変更しようかなぁ…6時間保たなかったってクレームやだし」
「そこは直さない方が良いと思うよ?むしろ『最大防御量ゾンビ換算およそ14000体分』って追記して送った人にメッセージ送れば良いよ」
「そうしなかったことを後悔してるよ…ソレだったら最大7200体処理可能って出来たのに…」
突っ伏したまま「3日分のエネルギー返せー」と呻いている祓戸。
「はい次のコメント…って、えー?」
「何、どうかしたんですか?」
『巫女様の実家付近襲撃を受けたらしいんですが、一帯封鎖されていたのに襲撃って何かあったんですか?』
「シラネ」
「兄者以外はここに居るしねぇ…」
『えっ?』
『避難的な意味で?』
『何かあったん?』
『お兄様は?』
「兄者にメッセージ送った。説明するなら来ると思うけど…今、僕たちより忙しいはずなんだよなぁ…」
「忙しいが?」
ガタガタッッ!
驚きのあまり二柱揃って椅子からスッ転んだ。
「どうしてここに転移できるのかなぁ!?毎度毎度強化して上位世界の神殿奥クラスの防御態勢なのに!」
「それは呼びたいのか呼びたくないのか…まあ良い。ここに居られるのも4分が限界だから簡潔に言う。
事前に襲撃を受けるのは分かっていたが、時期含め確定ではなかった。なので今までの経験と戦略上のタイミングを鑑みて友紀絡みのトラブル時に行動を起こすと予測、佑那とその関係者をここへ移動させ、周辺の住民の方々には1週間ほど近隣へ旅行をプレゼントした。勿論こちらの自腹だ。
そして襲撃は実行され、犯人どもは捕縛。現在は封鎖を解除している。
襲撃が何故分かったのかは調査結果であり、犯行目的は佑那の誘拐。襲撃者はダンジョン深層に居る異界のモンスター達。そして企画者はダンジョン側に与した神だ」
「「あー…」」
驚きもなく納得の声を上げる二柱の神。
「分かっていたのなら野放しにして欲しくはなかったんだが?」
「だってお兄さん私達にも言わなかったじゃない」
「うっかり喋りそうだしな」
「ちょっ!?」
「僕はとばっちりだよ!?」
「犯人分かっていて放置した責任があるだろうが」
「確証が無いとどうしようもないんだよぉ…」
神々、ダウン。
「とりあえずここも見られていると思うので言っておく。
ダンジョン及び偽称神。貴様らは俺の逆鱗に触れた。絶対に一撃をくれてやるから楽しみにしておけ。以上だ」
「「………怖ぁ」」
絶対零度の視線と凍るような声。
その場にいたユグドラシルと祓戸は二柱抱き合って震えていた。
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