9話 TS化した僕は引っ越しを急ぐ
マジックバッグを受け取ると巽さんと僕は公用車で僕の自宅へと向かった。
朝は引っ越し手続きとか諸々の手配までって話してたんだけどなぁと巽さんに言うと、巽さんは小さくため息を吐いた。
「姫。危機感なさ過ぎです…引っ越し業者に紛れて悪意ある人間が盗聴器やカメラを設置したらどうするのですか?」
[まさかそんなわけないよ。あと姫じゃない]
「そのまさかをやらかそうとした輩がいるんですが?」
[突き抜けたケダモノが怖い!]
「男はみんなケダモノです」
[僕、男……今はこんな姿だけど、僕男!]
「姫は属性男の娘ですから大丈夫です。性別ゆうちゃんと特務課では常識ですし」
[僕の知らない常識がそこには蔓延っていた!?]
愕然とする僕を尻目に巽さんは車を駐車場に止め、後部座席から機材を取り出す。
[って、機材?]
「はい。盗聴盗撮の類がないかの確認です」
[……えっ?あるかも知れないの!?]
「当然です。紳士と自称する変態どもは昼夜問わず現れます。個人情報が漏洩していた場合、確実に。それを確認するために私がいるのです」
そう言いながら取り出した機器を組み立て始める。
[僕は先に部屋に行ってますね]
「すぐに終わりますので少々お待ちください」
部屋に行こうとするのを巽さんに止められる。
あっ、マジックバッグ持っているから単独行動禁止だった。
玄関開けたら即エンカウント。
僕の部屋に女性がいた。
しかも僕の下着を漁っていたという恐怖。
ここまでやばいのは想定外ですよ?
「友紀キュンお帰りなさい…何その泥棒猫」
[いや、貴女誰ですかと言うのが先ですよ?]
「今まで私にお家をちっとも教えてくれなかったから」
[会話が、かみ合わないっ!]
そして僕の下着から手を放さない変質者…鞄に入れたッ!?
「───確認が取れました。中級甲種探索者稲瀨育美。住居侵入罪及び窃盗の現行犯で拘束します」
「友紀キュン!コイツを倒して二人でゆっくりお話しぃづっ!?」
変質者さんは最後まで言う事なく巽さんに拘束された。
一瞬で間合いを詰めてからのそのまま踏み込み、当て身と共に引き倒した上で流れるように拘束をする巽さんはとても格好良かった。
自分が絶対にできない事だからなぁ。
「警察と協会の運営2課が5分以内に到着します。大変申し訳ありませんが現状維持でお願いします」
[あ、了解です]
僕は邪魔しないように部屋の状況を確認する。
───うわぁ。
何だろう。見つけてはいけない間違い探しで予定外の間違いを見つけてしまった感じがする。
見覚えのない電源タップが2つ。
PCモニターの上にWEBカメラ1つ。
これ、トイレとお風呂場が怖いヤツだ。
視線は常に全体を見る。あ、ベッド側に知らないぬいぐるみ。
鍵かけていたのにこんなに入られるって何!?
数分後、警察と協会の探索者取締係の対探索者班の人が来てくれた。
僕がこの姿になっている理由を軽く説明し、この変質者が下着を鞄に入れた事を説明。
何故そんな事をしたのかと聞いても先程と同じ事を言い首をかしげた僕達は下着はどうするつもりだったか聞くと「マスクにするつもりだった」という壊答にその場にいた全員がドン引きし、疑いの余地無しと連行されていった。
なお、あの変質者に反省の色は見えなかった。
女性警官には残ってもらい、知らないモノと怪しげなカメラ等がある事を言うと表情を変えた。
場所を指さし、警官は顔を引きつらせる。
巽さんが機器を使って調べ、険しい表情を浮かべる。
ぬいぐるみを含め全部チェックした結果、風呂場やトイレを含め盗聴器やカメラは5カ所合計11個あった。
僕の個人情報程度でと思っていたけど、洒落にならないわ。
昨日の今日でコレですと正直に話すと「鍵云々ではなく今すぐ逃げてください。これは引っ越しとか言うレベルですらありません」ともの凄い切羽詰まった顔で言われてしまった。
心の中では「ですよねぇ~」と思ったけど、今移動する旨と被害届をその場で記載して作業を終えた。
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