173話 襲来~ただし純粋な質問で即退散

 電話して2分経たずにお三方が部屋に入ってきて…

「「「ええええー?」」」

 いや、少なくとも課長と巽さんは分かっていますよね!?

「いや、人が神様三柱に抱きつかれている姿は見た事無いが?」

「おそらくどの書物にもこんな百合ハーレム状態書けませんね」

「えっ?これ、百合ハーレムって言って良いの?」

[…うん。みんな困惑しすぎです。はい皆さん離れてー]

「「「はぁい…」」」

 渋々と離れる三神。

[紹介しますね。こちらの欧風な方がアディエーナ様。少し前に合流した異界の上級時空神様。そして、伊邪那美お母さんと大宜都比売様です]

 と、紹介した瞬間だった。

『見つけた…見つけたああああああああっ!』

 部屋中に男性の大きな声が響き渡った。

「領域拡大!お姉様の領域を一時的にお預かりします!」

 アディエーナ様がそう言って僕の管理領域を一気に拡張した。

 と言うことは…三名もその神域に入ると言うことで…

「「「ううっっ!?」」」

 片膝を着いて三神の神圧に耐える。

 さっきまで普通だったんだけど、声がした瞬間にマシマシ状態になったから…仕方ない!うん。

『母上ぇぇぇぇぇぇっっ!』

 そしてやってきました暴れん坊。多分、須佐之男命。領域をこじ開けて乱入してきた。

「っ!?」

 ガタガタと震える大宜都比売様。

「……」

 伊邪那美お母さんは須佐之男命を冷たい視線で睨み付け、

 ボンッッ

 スナップを効かせて虚空を殴った。

「がっっ!?」

「「「えっ?」」」

 バチンと言う凄い音と共に須佐之男命が吹き飛ばされる。

「オマエか…オマエが私の娘を!!」

 あ、これはマズイ。

 素早く祈念珠を二つ取りだして一つを部長達の方へ、もう一つを伊邪那美お母さんの方へと投げた。

 そして轟く雷鳴。まさに轟音。

 八雷神。

 空間が歪むレベルの黒雷が須佐之男命目掛けて何度も落ちる。

「国産みより神産みを行って二度、魂を保護し再び産み直した国土と五穀の神をオマエが、オマエが!!」

 鳴り止まない轟音。

 アディエーナ様を見ると両手でバッテンを作った。

 伊邪那美お母さんか、結界が保たないか…どちらかだよなぁ…

 僕は伊邪那美お母さんの方へ行き、前から抱きつく。

「ぅえっ!?」

[お母さん。落ち着いて?]

「でも、彼奴を滅する必要が…」

[大宜都比売様が別の意味で怯えていますから]

「えっ?…あっ」

 伊邪那美お母さんを超至近距離で見ていたためか、別の意味でガクブルしていた。

「……ごめんなさい。貴女を怖がらせるつもりは無かったの」

「はい…」

「はは、うえ…私は…わた…」

 洒落にならないほどズタボロな須佐之男命に前々から不思議に思っていた言葉を投げかける。

[いや、そもそも須佐之男様は伊邪那岐様の子であって伊邪那美様の子ではありませんよね?]

「…………えっ?」

 僕の言葉に須佐之男命が固まる。

「そうですね」

 伊邪那美お母さんが即答する。

「………えっ!?」

「あのダメ元夫が縁切りをしたあと、アレが単独で作り上げた神ですから」

[ですよねぇ…]

「しかも私の実の娘を斬り殺すなんて…」

「しかし、それは、そいつが…」

[大宜都比売様。食料って口とかお尻から出るのですか?]

「そんなわけ無いですよ!?両の手から出すのです!あの時は神々から色々言われて数百人分の五穀を出した後に、ある神に「どこか別の所から出して楽しませろ」なんて無茶苦茶なこと言われたので…口を押さえる仕草で出したりとか練習はしていましたけど」

 …………

 全員の沈黙。場の空気が滅茶苦茶重いっ!

[神話口伝が古事記や日本書紀となっているだけに齟齬や不都合な部分の添削はあったと思うけど、これは…っ!

 そんな事言いだした神様は誰ですか!?

 その人が原因で勘違いした須佐之男様に大宜都比売様斬り殺されたんですが!?]

「………」

 須佐之男命を見ているのですが…まさか…

「……あと、2、3発は雷落しても?」

[あ、はい。終わったらアディエーナ様に言ってください。飛ばしてくれると思うので…]

「「えっ!?」」

 アディエーナ様と須佐之男命が驚いた顔でこっちを見る。

 須佐之男命は兎も角、御免なさいアディエーナ様…これはどうしようもないって…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る