845話 広がる世界、広まる信仰

 聞いたら大陸レベルの広さになっているらしかった。

 ここが世界の中央で、北の山脈を越えると冬の大地らしい。

 その山脈から川が真っ直ぐ流れ、現在それを辿って進んでいる模様。

 既に1週間経過しているらしいんだけど…休まない部隊が車で1週間?

 途中で調査のために止まったとしても、7~8,000キロは走っていそうで怖いんですけど?


 調査報告書を軽く確認した後マイヤに聞いてみると…

 大きな大陸が一つだけあり、大きさはオーストラリア大陸の1.4倍程度。それ以外は海がある状態らしい。

『世界さんがぱん、けーき?…ぱんげあイメージしているって!だからまた大陸大きくするね!って』

 マジか…元々管理していないのにこれ以上大きくなるのか。

「生物は、いないよね?」

『うん。ここに居る皆で全部だって!』

 良かったぁぁぁっ!

 ここは箱庭世界であって新世界として完全起動させるつもりないですからね!世界さん!お願いしますよ!?

「うん。まだまだここは箱庭世界であって欲しいから…」

『世界さんもここはマスターと周りの方々の楽園なのでって言ってたよ』

 ヤンデレさんの僕への解像度が一段階上がっている気がする件について。

 その恐怖はマイヤを抱っこして思い切り可愛がる事で相殺する事にした。

 途中、リムネーが帰ってきて寂しそうにこちらを見てきたのでリムネーも抱きしめて皆可愛がった。



 SIDE:世界~とある国~


「テロ組織の方が俺達よりも良い武器使っているんですがねぇ!?」

 プレハブの巨大武器倉庫を見て視察に来ていた軍警察の男が悲鳴を上げる。

 そこにある武器は軍や軍警察が持つ武器より新しいモデルの武器ばかりだった。

「これら全部貰って良いらしいからな、軍の備品になるぞ。もっとも、登録作業があるから最短2週間後らしいが」

 前を歩いていた管理官が男の悲鳴にそう応える。

「それでも心底ありがたいですよ。弾薬もこんなに沢山溜め込んでやがる…マジで国に喧嘩売ったら勝てるレベルだろこれ…」

「軍には虎の子のミサイルがあるからなぁ…それに軍を制圧して政府をどうにかしたら周辺諸国が敵に回るからな?」

「そのお隣さん、組織とズブズブだったらしいじゃないですか」

「うちの国とは鉱山利権やら水源利権で喧嘩をしていたしなぁ…しかし、神様方も分からんなぁ」

「何スか?」

「武器や物資には一切手をつけず、金や金銀財宝類だけまるごと回収してあとはどうぞって事でのこれだ」

 その武器庫には食料品も多数備蓄されており、この国の人間にとっては心からありがたいモノばかりだった。

「…神様に正直に伝えたからこそ手を差し伸べてくださったんじゃねえッスかね?」

「武力も足りない、現状の治安維持が精一杯だと正直に話し助けを求めた結果か」

「実際問題、武器と食料が自分らには一番必要であって金とかは二の次ッスからね」

「…確かにな。これだけあれば国民の餓えも軽減され、化け物達に対しての防衛も強化出来る。実際こんな世の中になった以上金よりもマギトロンがありがたいしな」

 管理官の台詞に男は確かにと頷いた。

「神様は、随分と寛大な裁きを下してくださったんですねぇ…」

「十中八九巫女様のおかげだろうが」

「でしょうね…まったく巫女様を神と崇めたくなりますよ」

 深々とため息を吐く男に、

「ん?俺はもう崇めてるぞ?」

 管理官が普通にそう返してきた。

「管理官殿ッ!?」

 慌てた男に対して笑いながら管理官は先へと進んでいった。


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