82話 TS化した僕、高みの見物をする。

 誰も一言も声を発することが出来ない。

 そりゃあそうですわ。神威を浴びた瞬間に「あ、これ駄目だ。逆らっちゃいけないヤツ。神様。めっちゃ神様ですやん」って顔しながら涙流しているし。

 巽さんですらかなりアウトっぽい。

 課長は…顔色は悪いけど…うん。無事。

「どうした。神を前にその不敬な発言をしたらどうだ?本当に神なのかと。巫女の詐欺では無いのかと」

 せお姉様が静かに声を発する。

 それらの言葉を発した者達は涙を流し、首を振っている。

「言葉に責任を持て、と何度も注意をされていたが、めでたい奴等だ。そうだな…其方等の一族を其方以外全員黄泉の国に連れて行ってやろうか?ああ、この場で我等に向けて暴言を放った者達全員に言っておるぞ?」

 伊邪那美お母さん悪役ムーブでノリノリですね。

【はは:さすがにおさなごはかわいそうですね】

 あ、半分ガチですわこのお母様。

「脅しかどうか…煽った者達の職業祝福は全て扇動者に変更をしている。更に言えばカルマ値が一定以下の者に至ってはスキル封印及び扇動者称号の後ろに厄災と付けた。今後一切の幸福は訪れぬと知れ。それと、この場に神子を引っ張り出そうと画策したそこの一人を含めた七名に関しても同じ厄災を付け、オマケに臓腑が少しずつ腐るようにもしておこう。取り替えても意味は無いから安心して震えていろ。死なれても困る故、自他殺抑制の祝福もつけてやろう」

 ミツルギ姉様オーバーキルッス…

「暴言を吐いてまで呼び出しておいて質問とやらはどうした?」

「……恐れながら」

 課長が席を立ち、記者団の所まで行くと姉様方の方を向き膝をついて頭を垂れる。

「質問があるのか?」

「はい。我々はダンジョンについて無知であり、神々の祝福や加護に関しても無知でございます。ダンジョンとはどのようなもので偉大なる神々がどのように我等を守っていたのかをお聞かせ願えれば…」

 課長は一度話を聞いてはいるが、再度皆んなのためにと動いたようだ。

「ふむ…我等が行っていたことに関しては神子が述べたことと始めに言ったことがほとんどだ。二度は言わぬが…ただ、基盤は作ったが職業やスキルに関しては現地神…それぞれの神が作り分け加護を与えていった。

 迷宮に関して言えばこの国は大半が入口を結界で塞ぎ易々と妖魔が出てこられぬようにしているが…不信心者が多い今、いずれはその力も無くなるだろう」

 ミツルギ姉様はそれだけ言ってせお姉様を見る。

「迷宮…ダンジョンに関しては異界からの侵略であり、この世界の悪鬼悪霊モンスターなどを仲間にして全ての生命を贄に神への昇格を図るモノの仕業じゃ。今は神に最も近い者が危険な所を潰して回っておるが、それが無ければ…このような茶番すら行えなかったであろうな」

 せお姉様はそこまで言うと課長を見る。

「この国の者共は其方のような者をもっと重用しておればな…」

 わざとらしくため息を吐くせお姉様。

【強化したいんですね?】

【せお:うん!できれば妹ちゃんと君の護衛あわせて三人ともね】

 課長と巽さんの強化フラグ入りましたー。

「……より一層精進致します」

「うむ。我等が神域にて修練をすることを許す。励めよ?」

「ありがたき、幸せ……」

 低頭する課長に対し満足げに頷き、せお姉様は「ああ」と何か思い出したようにカメラの方を向く。

「世界の神を蔑ろにした者共よ、神の名を使い私利私欲に走りし愚者よ、今この時を以て汝等への祝福と加護を封ずる」

 そう言ってせお姉様達神々は消えた。

 残るは静寂のみ。

 呆然とする者、項垂れる者、ブツブツと狂ったように呟く者、なかなかにカオスな状態。

「以上をもちまして、会見を閉じたいと思います」

 僕はそう言って軽く一礼し、会場を後にした。


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