648話 誘拐未遂と、膝枕希望


 SIDE:佑那


 エントランスを抜けるとそこは戦場だった。


 なんて事は無く、平穏な世界。

「結界も張られているし、うっすら聖属性の気配もあるし」

 朝の日差しの中、神聖職の人間が朝の訓練と称して聖光を使っているのかな?

 そんな事を思いながら実家方面へと足を向ける。

「岩崎佑那だな?我々と来て欲しい所があ「お断りします」」

 スッと周りを囲んできたスーツ姿の男性6名を軽やかにスルーして歩を進め───

「銃を抜いたのなら…覚悟はあるのですよね?」

 後方で懐から銃を抜いた2人に向け濃密な殺気を向ける。

「「!!?」」

 懐から銃を取り出した2人は端から見ても分かるレベルでガクガクと身を震わせていた。その程度なら敵対意思を見せなきゃ良いのに…

 私は小さく嘆息し、そのまま歩を進める前に半歩右へ。

 直後私の居た所を銃弾が通過した。

 ああ、怯えさせすぎたか。やりすぎイクナイ。

「───殺意を確認しました。貴方方は、敵対するという事ですね」

 クルリと振り返り6人を見る。

 2人を必死に押さえつける4人。

 だがもう遅い。

 全員へ先程とは違う殺気を叩きつけた。

 そう。向けるのではなく叩きつけた。

 じわりとくる死の恐怖ではなく首を断たれたような死の幻影に一瞬で6人全員が白目を剥き失禁してその場に崩れる。

「多用厳禁というのは、こんなみっともない姿を見ないようにするためでしたか」

 私は結羽人兄さんからよく喰らっていましたが…それでも鈍らなかった事を褒めて欲しい。

 具体的には友紀兄さんに生の太股で膝枕&ヨシヨシフルコースで。

「周辺にいるはずの監視は何をしているのか…ああ、制圧されていると」

 大きくため息を吐いて電話をする。

「あ、佑那です…マンション付近で6名に拉致されかけそれを避けようとした所発砲されました。相手を無力化していますので大至急、大至急来てください。なお、監視員の方々は制圧されているようです」

 一方的に用件を伝え、通話を終える。

「はぁ…」

 超兄さんに癒やされたい。

 もうマンションに戻って兄さんに抱きついて暫くじゃれついた後で転移で送って欲しい。

 周辺の気配を探知しながら警官隊が来るのを待った。



 SIDE:友紀


 佑那が疲れた顔で戻って来た。

「外出てすぐに襲撃受けたから実家まで転送して欲しい…」

 ええっと、佑那不幸すぎない?

「兄さん慰めてぇ…」

 そう言いながら抱きついてきた。

「もう、佑那は甘えん坊だなぁ…少し休んでからタイムさんに送ってもらうから」

「兄さん、膝枕!」

 いやどんだけ鼻息荒くしているのさ…

「まあ、良いけど…」

 何となく嫌な予感がしたので女性化して膝枕することにした。

「違うけど嬉しい…」

 そう言いながら佑那は僕の太股に顔を埋めた。

 いやいや何で顔を埋めるの?

「佑那?なんか変態的だよ?」

「兄さんが魅惑的すぎるのが悪いんです!」

 目が血走っているんだけど?何か禁断症状?

「ああ、やっぱり佑那は百合の人…」

「むしろ兄さんの元の姿で膝枕して欲しかったんですけどね!」

 あっぶな!佑那あの姿でも同じように顔を埋める気だったのか!


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