286話 2dayPM2~3幼女神による実食と緊急連絡

「ん」

「ありがとうございます」

 僕のお礼に邪幼女神様は小さく頷き、椅子に座る。

「邪神の定義が崩れる光景」

「まあ、ザルカンの主神ですからノーカンノーカン」

「ゆーちゃん、その主神を働かせたことになるんだけど?」

「本人が働いたと思っていなければ問題無いんじゃない?それにゆーちゃんのおやつの前には全てが無力」

「いやそれは言いすぎだと思うんですけど!?」

 お願いですからそんなやっすい神様にならないでください!

「で、この目の前にある四種の、ほとんど見た目が変わらないケーキは…」

「本日のおやつですけど…いつも以上に頑張りました!」

「見た目というか、存在感が凄いんだけど…」

「特にこの三種は、いや…二種は凄い」

 せお姉様が少し顔を引き攣らせ、ゆる姉様が純粋マロンモンブランと芋栗クリームモンブランをじっと見つめている。

「今回の栗は僕の神域産です!」

「「!?」」

「?」

 驚く姉様方と首を傾げる邪幼女神様。

「因みにスイートポテトモンブラン、スイートポテトクリームとマロンクリームの二層モンブラン、各クリームを更に混ぜ合わせた芋栗クリームモンブラン、最後が純粋なマロンモンブランです」

「───配合率というよりも、含有率かぁ」

 怪しいお薬のような言い方やめてもろて?



 三名の幼女神はスイートポテトモンブランを一口食べる。

「…甘い。美味しい!」

 邪幼女神様の笑顔いただきました!

「…凄くね?」

「凄いよね…美味しいけど…もう少しアクセントが」

 食べて唸るゆる姉様と審査員かとツッコミ入れたくなるような発言のせお姉様。

 まあ、なんだかんだ言いながらすぐに食べ切って次に手を伸ばす。

 次は二層モンブラン。

「ふわ、わぁ…」

 …なんだろうなぁ… 邪幼女神様の方が純粋じゃね?

 目を閉じて口をモゴモゴさせている邪幼女神様の横で姉様お二方は「うっま!」「これだよこれ!」と、砕けた感じで貪り食っていた。

 そしてここで一度ダージリンティーで一息。

「ゆる姉様、せお姉様。流石にもうちょっと、もうちょっとお淑やかに…」

「「えー?」」

「邪神に食べ方や優雅さで負けているとか笑えません…」

「そんなに!?」

「そんなに」

「…まあ、うん。ちょっとハッチャケた自覚はある」

 せお姉様、自覚あったんだ…

 さて次は混合クリームモンブラン。

「「「………」」」

 無言。ただ黙々と食べる。しかも全神経を集中させている感じ。

 まあ、美味しいなら良いんですけどね?

 そして最後にマロンモンブランを食べ始め…

「「「!!」」」

 いや怖いよ!?

 カッと目を見開いてケーキを見て、僕を見て、ケーキを見る。

「芋は要らない子だった?」

「違う。芋が負けているの」

「これは、土地の力…!」

 いや、上の階も神域ですよね!?

 僕の考えを読んだようにゆる姉様が首を横に振る。

「準神域。完全な神域ではないんだよ?」

「味はバランスが取れているけど、素材の力が…」

「ゆーちゃんの土地でお芋を!」

「えっ?嫌ですけど」

「「「………」」」

「もう大量にあるんですから僕の所で育てる意味は無いですよね!?むしろ栗を上の階で作って貰えばバランス取れますよ!?」

「「ソンナー」」

「…残念」

 幼女神様方はガックリと肩を落とすと残ったケーキをゆっくりと食べ始めた。

 他の神様方の分を用意しないと…

「あ、紅茶おかわり」

「「私も」」

 分かりまし───

 スマートフォンから着信音が鳴る。

 協会からだ。

「はい。岩崎です」

『今すぐその建物から逃げろ!空軍がその建物を攻撃しようとしているという情報が入った!』

 なんだかもの凄く切羽詰まったような課長の声。

「…課長。この建物自体、ミサイルより丈夫になっているので大丈夫です。自衛隊ですか?」

『念のために下の階に降りてすぐに逃げられるように…いや、自衛隊では無い』

「あー…強硬手段という名の暴走しちゃったかぁ」

「……煽ったくせに…」

 ニヤニヤしながらいうゆる姉様に対してジト眼でゆる姉様をみるせお姉様。

「…ミサイル、大丈夫ですか?」

「そもそも当たらないし、発射したら即確保するから大丈夫!」

 …えっ?…確保?


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