375話 事情確認と厄介事

「しかし、千年大宮か…何処までも祟ってくるな」

 立ち直った課長さんが苦々しい顔でそう呟く。

「そう、ですわねぇ…勝手に私を自分たちの巫女だと騒いだり…ねえ?タイム」

「そうッスね…トップ不在で瓦解しても残党が変な活動しているって、どうなんッスかねぇ?」

 ん?

「タイム。貴女はその後を確認しているの?」

 私の問いに少女をやってきた警備員に引き渡しながら不思議そうな顔をする。

「えっ?当然ッスよね?後処理しなさそうな感じでしたし、あちらの国はすぐに財産差し押さえとか始めたッスから迷惑料の回収もしておいたッスよ」

 迷惑料て…

「ほう?あの国はそんな事を」

「それはもう。情報含めめぼしいモノは一切合切持っていったッス。隠し金庫や隠し部屋の物すら探し出していたッスね」

 うわぁ…なんというか、うん…

 内心どん引きしている私と納得するように頷いている課長さん。

 えっ?ソレが普通なんですか?

「恐らく暗部用の資金などは帳簿にも載せていないだろうな…」

「あの資料には無かったッスね。そう言えば各国には押収した資産で補填とかしたんスかねぇ…」

 自由裁量の資金を暗部に持たせているだろう事は想像つきますね。

 難しい顔をしている課長さんにタイムがそう言えば、と疑問を口にする。

「していないと思うぞ。それはその組織がすべき事だと突き放しているだろうな。押収しておきながら」

「その事を神々が配信で広めたら面白いことになりそうですわね…」

「とは言え既に神敵だからなぁ」

 腕を組んで考え込む課長さん。

「神敵解除を目指してこれ幸いと動くのでは?」

「…ああ!神々が示したと勝手に思うわけか!」

「まあ、実際は取り上げた資産を補填してもらう形ですが」

【せお:了解!それ伝えちゃうね】

 やだ…うちの神様、フットワーク軽すぎ…!

「どうした?また何かあったのか?」

「体調でも悪いんッスか?」

 私が余程変な顔をしていたのか、課長さんとタイムが心配そうに聞いてくる。

「…いえ、祓戸様が配信で今のことを伝えると」

「「………」」

 うん。そのチベスナ顔は私にではなくせおお姉様へお願いしたいのですわ…



 巽が少し険しい顔で戻って来た。

「姫様。大変申し訳ありませんが暫くの間…」

「千年大宮の事であればこちらで把握済みですわ」

 巽の台詞を遮り簡潔に伝える。

「襲撃に関してはどうなった?」

 課長さんの問いに巽は背筋を正す。

「カウンター1名、業者用搬入口及び非常口にそれぞれ1名の侵入者があり、全て排除。襲撃者の死者1名、こちらは軽傷のみです」

「カウンターの襲撃者が死んだのか?」

「いえ、職員通用口前で胸を押さえて死んでいる青年を発見しました」

「「「…えっ?」」」

 その台詞に私達三人は顔を見合わせる。

 であればあの少女はどこから侵入したのか。

 いくら隠れ蓑を使ったといっても絶対に気付かれないという保証は無い。であればどうやって侵入し、このブースまで来ることが出来たのか。

「フィラ、貴女はあの子について調べるように」

「了解しました」

 さて、少しでも問題事が減れば良いのですが…


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