572話 協会本部と、新非常勤
SIDE:協会本部
ダンジョン返しと巫女の援護によって最悪は脱することはできた。
しかし全てのモンスターを駆逐できたわけではなく、モンスター発見の報告や討伐依頼などが相次いだ結果、この数日は現時刻…午前4時を過ぎても協会の人間は少なくなった人員でフル稼働している状態だった。
鳴り止まない電話、被害報告、そして怒声。
モンスターや妖魔の類は一般人や警官では太刀打ちが出来ない。
通常モンスターならば探索者、中層域等のモンスターまでならばハンターが対応可能だが…
「妖怪出現の連絡です!」
受付からの切羽詰まった声が聞こえる。
「…場所と妖怪名は」
「それが…中世の騎士が出たと」
「それは長谷川部長の部隊だ!部隊の巡回マップを配っただろうが!それを確認しながら応対してくれ!」
「済みませんっ!」
そのやりとりを他人事のように聞き、白人青年は大きくため息を吐いた。
「ナント言うか、ヌルイ、ですね…」
「昨日から入れた夜間臨時任用のオペレーターだからな」
「マあ自分モ臨時任用デスが…平和過ギませんカ?」
白人の青年が少し呆れたような顔で藤岡に問う。
「関東、特に東京は致命的な事態になっていないからな。部長の部隊が太田、品川、目黒の三区を巡回しているし、他区は自衛隊や機動隊、磯部部隊が見ているからな」
「残念デス…今宵ノ虎徹が火を吹イタのに…」
「銃に刀の銘を付けないでくれ…ややこしい」
ヴィーッヴィーッ!
『池上駅付近で全長2メートルほどのネコがいるとの通報が入りました!』
「池上駅付近は結界内。その中で動けるという事は敵性妖怪ではないが、念のため巽を向かわせる」
「では、行って参ります」
巽が席を立つ。
「頼んだ」
「……一人デ問題無いノですカ?」
「今言ったように敵性存在ではない。下手をすると岩崎家の元保護猫だ」
「?!」
青年がかなり困惑した表情を見せた。
「巫女様ノ猫は妖怪!?」
「妖怪猫を兄が拾って暫く面倒を見た後野に放ったらしい。今では蒲田の商店街や池上の商店街をパトロールする貴重な戦力だ。ああ、岩崎家の周辺は九尾狐が警護しているからな?」
「日本、どうなっテるの!?」
頭を抱える青年に藤岡は「まあ、そうだよなぁ」と頷く。
「外国や日本の殆どでは妖怪も人に牙を剥くが…岩崎家関連妖怪…聞いた話だと関東3体、近畿2体だったか…それらの居る所は他の妖怪も協力して外敵を叩いているらしい───」
「かちょー!鎌鼬の幼体を捕まえてきたんですけどー?」
香也が三匹のイタチの子を抱きかかえてやってきた。
そしてその後ろではミシェルが手話で『この子ら、妖怪です』と訴えていた。
「高野ォ!妖怪をホイホイ捕まえてくるんじゃない!」
藤岡は怒気と殺気を香也と三匹のイタチに向け放つ。
「!?かちょーが怒るからビックリしているじゃないですか…っ!?怖くない。怯えていただけなんだよね?」
驚いた鎌鼬達にバッサリと腕を斬られながらもどこかの谷の姫様が言ったような台詞を言う香也に藤岡は大きく深いため息を吐く。
「指を噛み千切られてしまえ…幼体でも敵性の奴は機動隊を壊滅させたからな?」
「omg…ダンジョンモンスターだけデも大変ナノに…ムチャクチャですヨ!?」
頬をひくつかせる青年に藤岡は小さく首を振る。
「諦めろ。岩崎周辺人物は基本変人しか居ないとみた方が良い」
「この子達を友紀に見せてペットにして貰えばバズる!?」
「お前、また兄にぶち転がされるぞ?」
「でも懐いて協力体制が整えば更に戦力強化にもってこいじゃないですか!」
そう言われ藤岡はしばし思案をした後、
「…私が連れて行こう」
「えっ!?でもさっきの威圧でこの子達は怯えて…」
「「「きゅっ!?」」」
香也の腕からスルリと抜け出した鎌鼬達は藤岡の前に集まる。
「誰が上かは分かるようだぞ?」
「「「うわぁ……」」」
一瞬で藤岡の配下となったイタチに三人はどん引きする。
「お前達三人は待機していてくれ。私は此奴らを連れてマンションへ行ってくる。今のマンションなら此奴らを入れても問題は無いだろう」
友紀にメッセージを送り、藤岡は三匹を連れて協会を出ていった。
「……日本っテ、凄い」
「課長の方が俺より化け物だった件について…あの子達を大人しくさせるの苦労したのに…」
「あれくらいで無ければ巫女様の上司は務まらないのですね」
三者三様の事を言いながら席に着く。
───本部は忙しいながらも、まだ辛うじて余裕があった。
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