309話 4day PM~崩壊 再侵攻と戦意

 SIDE:世界


 異変はあった。

 そして異変の2時間前に神々が例の配信を通してアナウンスを掛けていた。

 そして、世界は三度絶望へと叩き落とされる。


「くそぉぉぉっ!確かに今までよりも倒せるようになってるが!」

 中級探索者は出てきた小鬼を二、三撃で屠りながら叫ぶ。

「ゾンビや小鬼を今までの半分程度の労力で倒せるようになったのは大きいですが…感覚的なデメリットが大きいせいか、っ!マイナス感がありますね!」

 軍人がその叫びに返答しながらゾンビに銃弾を撃ち込む。

「ブライトンへ撤退しろと言ってるぞ!?」

「あの時獅子達のおかげで生存圈確保が出来ていたのにっ!」

「チクショウが!巫女様を完全に休ませるって発表を聞いた途端にこれか!」

「合衆国側ではダンジョンの魔人が人になりすまして色々洗脳行為をしていたようですし、他にも居る可能性がありますね」

「もしくは世界崩壊を欲している終末思想教団か…」

 士官らしき人物が手を上げると全員が一斉掃射をし、撤退行動に移る。

「我々はまだマシだろうが、この侵攻で神敵判定された三国はどうなるのか…」

 車両が廃墟を駆け抜ける。

「石板の上にあった掲示板を見て神に祈っちまったよ…俺等の所もまあまあ危なかったんだな…」

「確かに習慣で祈っているだけで敬虔な気持ちでは無かったというのはありますが、それを突きつけられた時の心中は全員同じでしょうね」

「いやぁ、俺は「ああ、やっぱりそうか」だったな」

「祈る行為はするが、一心に祈っているわけではない…声は届けども呟きは届かない…」

「そもそも俺祈ったこと無かったからなぁ」

「まあ、それはそれで良いのでは?こんな状態ですし、改めて神について考えるというのも───」

『墓地からゾンビが出たそうだ!』

 無線の知らせが全員の体を強張らせた。

「マジかよ…ダンジョンだけの問題では無くなってきたのか!?」

「我々も現代戦から中世に戻らなければならないんですかね…鈍器片手に」

「俺等探索者にそれ言う!?」

 余裕はないが、軽口を叩いて強張った心と体を無理矢理解し、車両は集合場所へと急いだ。


 SIDE:探索者協会本部


「岩崎がいなくなった途端にこれか!」

 ホワイトボードに貼られている関東地域の拡大地図は至る所に罰印がついていた。

「ここと中央官庁は藤岡課長と私の兵団が守りを固めます!残りの戦闘可能な職員は三人一組で周辺の見廻りに!」

「じゃあ、非戦闘職員は避難してきた近隣住民をできるだけ受け入れられるよう準備するよ」

 緒方新部長と長谷川部長が全職員に指示を出す。

「問題は…見放された地域ですね。まあ、ここも見放された地域なんですが」

 巽の呟きに藤岡がため息を吐く。

「救援は間に合わないだろうな。なにせアンデットメインだぞ?長谷川部長の騎士団なら余裕だが、数的に都市警邏が限界だし妖魔の類は流石に…そこは重点的に中務省が動くだろう?」

 そうですが…と巽が言いかけた時、西脇が遮るように大声を上げた。

「課長!静岡から緊急!百鬼夜行が確認されたと!」

「何処に向かっている!?」

「東海道を通って…東京に向かっていると!」

 その場にいた全員が息を呑む。

「恐らく奴等は東海道沿いを進むはずだ!西脇、防災警報依頼しろ!監視班以外で百鬼夜行を見たら死ぬぞ!それと報道各社にも緊急連絡だ!」

 藤岡の大音声に全員が一斉に動き出す。

「巽さん、みこチャンネルで何かアナウンスは?」

「部長…ダンジョン侵攻について話はありましたが、それ以外では…コメント欄にその件で書込が多数寄せられています」

「私の聖域発動も限界があるし、それをしすぎて騎士団が消えるのはもっと悪手…」

「…すこし、神々と対話を願い出てみます」

「───ええ。お願いするわ」


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