48話 TS化した僕は町を歩く(経済効果!)
酒屋を出て和菓子屋───志堂菓子店へ向かう。
酒屋を出た時から分かってはいたけど、遠巻きに僕達を見ている人が結構な数いる。
何人かは酒屋へと駆け込んでいったけど、何なんだろう…
「姫。あちらに洋菓子店がありますが…」
[うん。まだ時間があるから少し寄ろうか]
僕達は少し人気の無い洋菓子店に入った。
「いらっしゃい」
少し強面のお爺さんがレジ前に立っていた。
ここの洋菓子店も和菓子屋さん同様、僕の行きつけのお店だったりする。
おじさんの顔が怖いからお客さんは少ないけど、丁寧に作られている菓子はとてもおいしい。
[エクレア9個とスコーンのプレーンとチョコチップ、アールグレイを各4個、蒸しケーキを9個、アップルパイを8個、チェリーのショートブレッドを10個、シュークリームを9個ください]
「お、おぉう…全部で9404円だが…持てるか?」
[あ、そこは大丈夫です]
「そうか…少し待っていてくれ」
おじさんは少し慌てた感じで商品を箱に詰めていく。
「なかなか珍しいですね…ケーキ類はほぼないのですね」
[うん。ここのスコーンとショートブレッドは紅茶にとても合うし、エクレアのチョコとクリームとの相性は凄いんだ]
「そうですか」
……何故そこでほっこりとした笑顔を僕に向けるのかな?
「いえ、姫は綺麗可愛いなと」
[綺麗可愛い言うな]
「はい。おまちどおさま…9404円ちょうどだな」
おじさんは代金を受け取ると商品の入った箱を渡してきた。
僕はそれらを全てラタンバスケットに入れる。
「それとこれはオマケだ」
おじさんはそう言ってエクレアを2個くれた。
「二人で歩きながらでも食べてくれ」
[ありがとうございます]
「ありがとうございます」
「いいって。店の外で興味深そうに見ている連中に見せつけながら食べてくれ」
「ああ、そういうことですか」
巽さんは納得したように苦笑した。
「まあ、姫がおいしそうに食べれば女性陣が駆け込んでくるはずです」
いや、それどうなの?
マジでどうなん?
お店から出てエクレアを食べておいしいね巽さんって言っただけなのに、女性数名がお店に駆け込んでいった件について。
あと男性も一人入っていった。
「いや、私が赤面するくらいふにゃふにゃな笑顔でしたよ?」
[えっ?]
───まあ、次は志堂菓子店だ。
[ごめんください]
「ああ、いらっしゃい。注文の商品は全部できてるよ」
[済みません。急に大量注文を…]
「いいのよ。久しぶりに嬉しい悲鳴だったわ」
[お茶会に出したらみんなに食べ尽くされてしまって…]
「職人冥利に尽きるって喜びそうだよ…はい。商品ね」
お婆ちゃんは次々と奥から紙袋に入った商品をレジ前に置く。
「…姫。少し、多すぎでは?」
[いやぁ…せお姉様がもの凄い勢いで食べるから…それにあの人も昨日からいるし]
「あー……」
納得といった顔の巽さんに苦笑しながらお会計を済ませる。
「持てるのかい?」
[大丈夫です]
ラタンバスケットを開けて商品を入れていく。
「最近はそんな凄いモノもあるんだねぇ」
[このお菓子をとても気に入ってくれた
「そんな凄い人達が…嬉しいねぇ…こんなちっぽけな菓子屋に…」
[僕の心のオアシスですから!]
「嬉しいことを教えてくれた子にはお駄賃をあげないとね…」
[いやいやいやいや!流石に昨日の今日で貰いすぎですよ!?]
「いいのいいの。うちの人も久しぶりに作りたいって作った物だから」
[……えっ?まさか…うわぁ、特製どら焼きだ!]
「やっぱり見て分かるかい」
[はい!うわぁ…これ絶対お抹茶とだよぉ…]
「スイーツ元男子、萌える」
[巽さん!?]
「スイーツ元男子…!」
[お婆ちゃんまで笑って!?]
「御免ねぇ。そのどら焼きは帰りながら食べなさい。ああ、お姉さんにはこれをあげるわ」
お婆ちゃんはそう言って巽さんにカステラの切れ端ラスクを紙袋でくれた。
「えっ?…こんなに沢山は…」
「良いのよ。余り物だし」
[お婆ちゃん、相変わらず商売っ気無いよ…]
「生活できる程度には稼げているからねぇ」
そう言って笑うお婆ちゃんに礼を言ってお店を出た。
───で、お店を出たところで今度は結構な人数の人が志堂菓子店に入っていった。
いや、本当になんなのさ!?
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