379話 ウェルダンと特定厨

 数分後、三度巽さんのスマートフォンに着信が入った。

「巽です……はい。いえ、これは文字通り天災ですので…はい。天狗は…跡形も無く?それは良かった。では、元の調査に戻っていただければ…はい。お願いします」

 なんか怖いワードが出てたんですが?

 跡形も無く、それは良かった───無事だったって事かな?

 でも、巽さんの口元は微笑を浮かべているのに、目が笑ってないんだよなぁ…

「報告します。件の天狗一味は神雷によって殲滅。跡形も無く焼き尽くされたとの事です」

「当然だな」

「ッスね」

「以降も黄泉の国で責め苦に遭っているんじゃ無いかしら」

 ──────考えないでおこう。



 相変わらず車は走っている。が、途中で別の車に乗り換えており、その際は少女が別の車に乗るという方法を採っている。

 因みに、少女を乗せた車が走り去った後、追跡班がその車を運転手ごと収納しているのはここだけの秘密である。

 そして更に1時間後、漸く車が目的地へと到着したようだ。

 そこは元々県立公園だったところで小規模ダンジョンが派生して以降危険地帯として放棄されてしまい現在に至った場所だった。

 荒れ果てた駐車場に車を止め、少女と運転手が車から降りる。

 互いに無言。

 少女は辺りを軽く見回した後に森の方へと慣れた足取りで進む。

 十数分ほど森の中を進み、目的地であろう建物へと到着する。

 比較的新しいログハウスに少女と運転手が入っていく。

【せお:小規模結界を観測。地下2階まで存在を確認。】

【ゆる:施設内の人間32名確認。空間まるごと隔離する?】

【せお:お願いします】

 逃避行の果てに到着したであろう目的地。そこで彼女らは空間ごと拿捕された。


「───と言うわけで全員拿捕されましたが、全員の情報をぶっこ抜いたら大変な事が出てきました」

 せお姉様がちょっと困った顔だ。

「暗部の教官でありトップの劉芳以外は長年洗脳教育をされてきた子だったよ。そして、うん。この子達全員手遅れ…複数の人間を殺めていて、情報収集と暗殺の事以外は一切抜け落ちている殺戮人形だね」

 その台詞に全員が息を呑む。

「しかも彼女…劉芳が記録を全て破棄している挙げ句この暗殺リストは日本と共和国からの暗殺依頼があったり…だから表に出すとまーた大騒ぎ間違い無し」

「資料が無いからどう言い逃れも出来ると…」

「そ。誓文使ってやろうものなら即自決するだろうね」

 呻く課長に顔をしかめ「困ったねぇ」と呟くせお姉様。

「非人道的なら非人道的な手段で対抗しては如何でしょうか」

 巽さんがなんかとんでもない事を言い出した。

「ん?どういう事?」

「全員を洗脳して姫様のための工作部隊にするのです」

 待 っ て。

「いや、ちょっと待って。それは…それはちょっと拙いの…」

「───ふむ。一考の余地はあるな」

 止めようとした僕の台詞を遮るように課長がそんなとんでもない案に前向きな発言をした。

「課長!?」

【せお:……意識のすり替えで簡単にいける、かな】

「せお姉様!?」

 更にはせお姉様までが可能だと言い出す。

 ちょっとみんな落ち着こう!?


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