544話 取水と殊睡

 箱庭へ行き、湖の水を300リットルほどくみ上げて空間操作の箱に入れる。

「マイヤ達にも協力して貰おうかな…」

 そう呟いただけなのに、

『パパ!お手伝いするよ!』

『ああっ!私も、私もお手伝い致しますっ!』

 マイヤとリムネーがもの凄い速さで飛んできた。



「ありがとう2人とも。2人は流水操作とかできる?」

『流水操作、ですか?』

「というよりも、水を操ること…かな?」

『?…こう?』

 マイヤが湖の方を見ると、直径4~5メートル程の水球がゆっくりと湖から分離していく。

「そうそう。出来るんだね。あとは霧状にしたり、少しだけ雨のように降らすことはできる?」

『できる!』

『私もできます!』

 右手を挙げるマイヤと両手を挙げるリムネー。うん。うちの娘達が可愛い。

 マイヤは小さくてリムネーは慈母時の僕の姿なんだけど…

「良かった…じゃあ、ちょっと一緒に…そっか。リムネーはこれが初めての箱庭からのお出かけかぁ」

『『!?』』

 2人は驚いた顔で互いの顔を見合わせ、嬉しそうに笑い合った。

 本当に、姉妹だなぁ…その様子に僕まで嬉しくなる。

「さあ、まずはマンションに行こうか」

 僕は娘達と共にゲートを潜った。



 僕の部屋からフロアに出る。

 キョロキョロと物珍しそうに見るリムネーの肩の高さを浮遊するマイヤ。

 フロアから神域へと入ると、休憩中なのかコーヒーを飲んでいるミツルギ姉様とゆる姉様、せお姉様が居た。

 そして全員が僕とマイヤ、そしてリムネーを見て固まっていた。

「あ、紹介します。娘のリムネーです」

『お初にお目にかかります。私はリムネーと申します』

「ゆーちゃんが分裂したと思って焦った…っ!」

「…驚いた。滅茶苦茶驚いた!」

「ああ、宜しく。これからあの島に行くメンバーね?」

 驚くゆる姉様とせお姉様に対し、ミツルギ姉様は普通に対応していた。

 これができる大人の対応力!?

「ゆーちゃん!?この子!この子なんか凄いんだけど!?」

「うちの箱庭の湖と疑似純神結晶と僕の祈りで生まれました!」

『じまんの妹です!』

『マイヤ姉様…っ!』

 どやるマイヤを見て感涙しているリムネー。

 そして呆然としている二柱の神。

 ただ、ミツルギ姉様だけは優雅にコーヒーを飲んで一息吐いている。

「…良かった。疲れすぎていて上手く頭が回っていないせいでまったく驚けない」

 それはそれで拙いんですけど!?

「他の神々では出来ないからやっているんだが…終わらなくてなぁ…時間も無いし」

 力なく笑うミツルギ姉様。

「1時間だけ!1時間だけ寝ませんか!?リフレッシュした方が作業効率上がりますから!」

 僕はミツルギ姉様を引っ張ってソファーへと行き、寝かせる。

「膝枕じゃ無いのか…」

 少し残念そうなミツルギ姉様。

 だけど、その考えは甘い。

「さて、本当にお疲れのミツルギ姉さんに、全身全霊と空間操作の妙技を合体させた超・子守歌を披露しようかと思います」

「えっ?」

 僕を見るミツルギ姉様の上半身に空間操作を掛け、

「ミツルギ姉様、聞こえますか?」

「うぁぁぁっ!?」

 うん。悶えてる悶えてる。ASMRって凄いんだなぁ…

 そんな事を思いながらミツルギ姉様がたくさん頑張っている事やこれまでの感謝などを優しく、感謝と想いを籠めて5分ほど囁き続け、次に4分ほど子守歌を歌う。

 およそ10分。

 ミツルギ姉様は凄く穏やかな顔で眠りについた。

「…よし空間操作解除して…50分後に起こしてください。あと、件の島に行きたいのでゆる姉様、案内の方よろしくお願いします」

「「いやいやいやいや!待って!?」」

 もう、大声出さないでくださいよ。ミツルギ姉様が起きますよ?


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