634話 引き籠もりの理由と、新鑑定


「話はまとまった所で、神域マンションにご招待しますね!」

「…あっ、今日はその方向は方違えの関係上…」

「大丈夫大丈夫玄関で靴を履くだけだから」

 僕と紅葉さんは靴を履く。

 そして。

「タイムさん」

「転移オッケーッスよ!」

「ひゃわぁ!?出たああああ!?」

 僕らは神域マンションへと転送した。


「………どうして私は神様方の前に引き立てられているのでしょうか」

「いやまだ神様に会ってないでしょ…確かにここは神域だけど」

「あのね?一般人をこんな所に連れて来ちゃ駄目だと思うの…」

「?」

「一般人が初見でここに来るともれなく撃沈or絶望だと思うんだけど」

「ちょっとキツそうにしているだけの一般人もいたよ?」

「……一般人代表として、そんな人を一般人とは認めないわ」

「僕としては紅葉さんを一般人とカウントしていないから」

「なん、です……と?」

 そんな衝撃を受けたような顔をされても紅葉さんを一般人枠に入れたらとんでもない事になるのは火を見るよりも明らかだと思うんだ。

 紅葉さんの手を引いてスタジオ隣に入る。

「ここで何をするの?」

「紅葉さんのスキルの確認を。家を…美沙さんを守るための結界スキルは良いとしても、それ以外ね」

「………はぁ」

 大きなため息を紅葉さんが吐いた。

「そう言う所、本当に変わってない」

「駄目人間に変わったなんて言われたくないよ?」

「こう見えても1日10時間働いてますぅ…仮想通貨や株の動向を気にしたり、配信したり、配信のための資料を作ったり…結構大変なのよ?」

「でもお外には出ないと」

 サッと目を逸らされた。

「そんなに霊とか妖怪って外を闊歩しているの?」

「霊はそこそこ居るわ。私の場合はそれらが見えるせいで生け贄にされかけたから」

「兄さんと病院で会ったときの話?」

 僕が入院していたときの話だ。

 紅葉さんが検査のために入院してきて───狂った医者達に攫われかけたところを兄さんが偶然発見。

 紅葉さんとは元から見知っている人間だったことと、誘拐をアシストしていた人間がやらかした事もあり相手は言い逃れが出来ないレベルで大事になり警察沙汰に。

「…あの一件以降外に出るのが恐ろしくなったのよ」

「ますます、でしょ?」

「元々インドア派だったのは否定しない」

 紅葉さんがボソリと呟く。

「何度も攫われたり襲撃を受けているお嬢も身近にいるのに…」

「あんなチタンメンタルな人と一緒にしないで!?綱渡りなんてもんじゃないからね!?」

 まあ、普通の人ならPTSD発症させるかぁ…

「でもそれならますます召喚スキルを習熟させた方が良いと思うんだけどなぁ…」

「突然現れるのとかお化け以外の何ものでもないじゃないの」

「使い魔と思えば」

「人だし」

「まあ、人じゃなかった方が怖いと想うんだけど…」

 そう言いながらも紅葉さんをスキャンする。

「───んんんっ?」

 なんか、鑑定がもの凄く変わっているんですが…レイアウトの問題…じゃねぇわ。

「どうしたの?」

「紅葉さんの鑑定結果がおかしかったからちょっと唸った」

「どういう事!?」

 ああ、言い間違えた。失敗失敗。


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