930話 巫女にゃんこ達に祝福を


 ゆっくりと照明が点く。

 会場は拍手などではなく泣きながら「良かった…」と嗚咽まじりに言葉を漏らす人ばかりだった。

 僕は何も言わず暫くの間みんなが少し静かになるのを待った。

 数分後、少し静かになったので僕は声を掛ける。

「皆さんが思い描いた巫女にゃんこのエンディングは当たっていましたか?全員を生かしたいという黒守さんの想いを取り入れ、を使いました」

 全員がこちらを見つめている。

「現場の龍田比売様〜?」

「聞こえておるぞ〜」

 映像が映し出された。

 場所は先程の映像と同じ場所。

 ライブ中継と右上に書かれている。が、

 全員が絶句した。




「えっ…嘘…」

「なんで…本当に…?」

「やだっ、嘘…えっ?えっ?」

「神様…ああっ、神様っ!」

 龍田比売と一緒に3人の巫女が立っていた。

 それは紛れもなく巫女にゃんこ家族だった。

『皆様方のお陰で私達親子はこうして再会を果たし、親子3人で神様方に仕える事ができました。皆様ありがとうございました』

『『ありがとうございました』』

 母巫女にゃんこが深々とお辞儀をし、それに続いて巫女にゃんこ達が一緒にお辞儀をする。

 会場の全員が絶句し、直後感情が爆発した。

 ある者は神への感謝を。

 ある者は再び号泣した。

 他にもただひたすら口元を両手で隠し「神よ」と何度も呟く者や、巫女にゃんこは実在したんだと雄叫びを上げる者など様々だった。

「みんなあとで一緒にご飯食べようね!」

 友紀はそう言って映像を切る。

 それに合わせて参加していた全員が友紀の左右に並び立つ。

「はい、これで全プログラム終了です。皆様、ありがとうございました」

 全員が同じように一礼した。

 直後、爆発したような拍手喝采が会場を埋め尽くした。



 観客達が出ていった会場には神域設定席にいる神々とその側の特別席の課長と巽さん、そして天之御中主様がいた。

「ゆーくん!巫女にゃんこ、なんで実在するの!?」

 ミツルギ姉様が僕に掴み掛からんばかりの勢いで寄ってくる。

「えっ?管理者の補佐が足りないかなぁって、作りました」

「その手があったのか…」

「巫女にゃんこにも世話されたい…」

 ゆる姉様とせお姉様がくずおれている。

「みゆちゃんは外に出せないけど、みやお母さんとみいくんは今は1日くらいならマンション内であれば出ることは出来ますよ」

「「出られるの!?」」

「ええ。マイヤとリムネー同様某結晶を吸収していますので」

「あっ、これ僕より強い存在になってるに違いないんだ…」

「うわぁ…精霊と言うよりも自称精霊な下級神だよね、きっと」

 あんな可愛くて良い子達になんて事を言うんですか。

「みゆちゃんは龍田比売様にべったりだから暫くは無理かなぁ…あの方過剰なまでに可愛がるから…」

「荒ぶる神が猫可愛がりという恐怖」

「関係者だからノーコメントで」

 でもまあ、今日からは解禁だから3人は箱庭を楽しみながら暮らして欲しい。

「巫女にゃんこ達に会える…それだけで心が満たされる…ありがとう巫女神よ…」

 ちょ、待って待って!なんか尊死?しそうな神様方がいるんですけど!?


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