105話 手合~無理無茶無謀は事故の元

[兄さん兄さん]

「なんだ?」

[帰る前に兄さんVS佑那含めた本日稽古組3名と戦って欲しいんですけど…]

「あー、了解。斬る系無しだよな?」

[勿論です]

「極限なカラテとか?」

[どうしてそんなネタに走ろうとしてるん?]

「香也君が偶に来ては「この技、出来ますか!?」とね…まあ、今回は使わないが」

[マジでヤツは兄さんに害悪だから明日、ちょっとしばいてきます]

「今頃アルメニアだと思うが…」

 暫く平穏なら、良し!

「では、やろうか」

 兄さんはどこからともなく天狗の面を取りだして被ると、三人に対して構えを取った。

 兄さん、そのお面…目が開いていないような…


 ~~兄者、戦闘開始~~


「各々、武器は自由に使って構わない。此方はそこまで早くは動かない。今持てる全てを使い殺す気で来い!」

 結羽人の台詞に三人は瞬時に散開した。

 巽は無手で構え、佑那は細剣を構え、藤岡は刀の柄に手を掛ける。

 僅かな瞬きの間に佑那が踏み込みで距離を詰め、結羽人の心臓目掛けて刺突を放つが、

「点撃は絶対に避けられない状態でなければ意味は無い」

 中央に構えていた左手が微かに動き、細剣の剣身をいなして軌道をずらすと同時に、

「多人数の場合は二段構え、三段構え対策として常に一対一の状況に組み立てる」

 佑那の背後で結羽人の死角を付くように動いていた巽に対して牽制するようにいなされてバランスを崩していた佑那を巽目掛けて投げた。

「っ!?」

 瞬時に佑那を回避し、結羽人に向けて打撃を打ち込むが、

「スキル、闇器含め二歩足りん」

 手首を取られ、そのまま斜め後ろへと投げ飛ばされた。

 そして藤岡と直線の間が開いた所でその間合いを一気に詰めた藤岡が一撃必殺の抜刀を行う。

「───相手に間合いを悟らせず、回避及び迎撃を許さないのであれば有効だが、それはまだ足りない」

 横一文字の斬撃の先には結羽人はおらず、藤岡の後ろから首に手刀を突きつけていた。

「練習で人を斬ってしまう可能性を考慮してしまったか…」

「いえ、それはただの敗者の言い訳にすぎませんので…」

「…一度だけ」

 天狗の仮面を外し、結羽人は藤岡の目を見ながら静かに言葉を発する。

「貴女の求める先の技、その一つを見せます」

「えっ?」

「ここに一体の像がある」

 結羽人がどこからともなく取り出した像は禍々しい何かを発していた。

「邪神像!?それは中に邪神が…いや、邪神では無いな…だがかなり上級の悪魔が封じられているようだが」

「精神を破壊してあざ笑う悪魔が封じられています。一昨日処分を頼まれまして…ただ、この像を壊さずに悪魔を倒して欲しいと」

「それなんてとんち話?」

 佑那が顔を引きつらせるが結羽人は「よくある事だ」と言い、邪神像を床に置く。

「特殊な刀はフェアでは無い…まあ、これなら良いか」

 そう言いながら白鞘の刀を取り出し、腰に差す。

「さて、物質化はしていないそれを斬り捨てるのならその構造を理解しなければならず、攻撃するその刃もその異相へと届けねばならない───然らば」

 ィン───カチン

「相を潜り、界を潜る。その一端がこの剣だ」

 いつ抜かれたのか、そして何が起こったのか分からない三人に対し、女神ミツルギがただ一言。

「お見事。中身のみを斬り捨て成敗する…確かに見届けた」

 そう言って頷いた。


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