106話 発覚~兄がバイトで傭兵をしていた件について

「しかし、その依頼とは?」

 ミツルギ姉様の問いに兄さんは暫く考え、

「まあ、口止めはされていないか…上位世界の戦神殿から再侵攻してきたダンジョンの拠点壊滅とこういった邪神像の確保と中身の滅殺を依頼されている」

「えっ?現在侵攻を受けている所と言えば…光滅の戦神殿の所か!」

「ええ。あちらの依頼で傭兵のアルバイトをさせてもらっています」

 ア ル バ イ トて。

「報酬は防衛の壁をくれるそうだから気合いを入れて一日6時間はあちらでダンジョンを潰して回っている」

[こっちのは!?]

「向こうほど危険では無いからな…ここは。世界の広さもあるが、どうせ根幹で繋がっているのなら気付かれる前に潰せる所を潰しておきたい。それにここの方が浸透戦力がある。であればあちらのダンジョンの出禁を受けていない今のうちに取れる物を取っておくさ」

 ニヤリと笑う兄さんに僕は苦笑する。

「ああ、それと試してほしいものがあってな」

 そういって邪神像をしまって、別の邪神像を取り出した。

「友紀。これを破壊しないように浄化できるか?」

[えっ?ちょっとまってね]

 邪神像を床に置いてもらってすぐに空間操作で箱状に隔離する。

 この像形態って、中は別空間なんだっけ…じゃあぬいぐるみを除菌する感じかな?んー…それよりも圧力鍋かなぁ?

 ジワジワと聖光を箱の中に満たし、更に浸透させていく。

 あ、なんか叫んでる。

「う、うわぁ…」

「いっそ殺せって叫んでるわね…」

「悪と欲望の限りを尽くしてきた大悪魔だ。問題無い」

 えっと、浸透が遅いから空間操作で…密度調整をして…おお、神域の神威も入っていく。

「…振っておいてなんだが…友紀、お前チートが過ぎないか?」

[なんで!?家事の応用だよ!?]

「───そこでそんな応用思いつくのが異常なんだが…」

 あ、気配が完全に消えた。

「消えたが…邪神像では無いな」

[それは大丈夫。付着しているものを抽出して…この小瓶に入れれば、元通り!]

「………うん。完全に空の邪神像だな」

「ですね…僕完全に空の邪神像なんて見た事無いんですが…」

「俺のあの技ですら残滓は微かに残るんだが…」

 僕が処理した邪神像を囲んで話し合う兄さんとミツルギ姉様、せお姉様。

 そして、

「退魔における最終奥義は…家事?」

「課長、気をしっかり保ってください!私もちょっと怪しいですが、姫様のやることですから!」

「………まあ、うん。姉さんだから仕方ない。囚われのお姫様のはずがトロイのお姫様な姉さんだから仕方ない…」

 攻撃職系三名もなんか混乱しているんですが…僕悪くないよね!?


「───協議の結果、問題無いことと、今後邪神像の浄化はゆーくんにお願いすることに決定しました」

 ミツルギ姉様がとんでもない事を言い始めた。

[兄さん。邪神像って一杯あるの?]

「向こうの世界にはそこそこあるが…持ってくることが出来るのは一度に精々四、五体が限度だな」

[じゃあ週にそれだけで良いんだね!良かったぁ…]

「…この子、下級邪神クラスの悪魔を数分掛けずに払ったあげく平然としているんですけど…」

「払うことに特化した貴女の見解は?」

「…ちょっと手法を研究して頑張る。見たところ、省エネっぽいし」

「しかし、あまりまとめて置かないようにしてくれ。封じているとは言え完全では無い。そして呪物と同じく強大化する」

[あ、それは大丈夫。やり方覚えたし、滅菌器の要領でまとめて処理できるって分かったから!]

「「「………」」」

 あの、兄さん?ミツルギ姉様?せお姉様?その目は心にクるので止めて戴ければ…


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