1037話 某時代劇EDのギターと映像が見飽きない件


「───と言うことなんですが、どう思いますか?」

「うん。とりあえずゆーちゃん、正座」

「していますが何か?」

「そ ん な 危 険 な 事 は や ら な い で!」

「安全マージン取り過ぎて何故バレていないんだろうと疑問に思うレベルですよ?」

「術式!術式見せて!」

「白城さん」

「こちらを」

「………ダミーとデコイ?同じ、ではないんだ…ぇえ?どんな発想があったからこんな疑似リンクと身代わりの呪符を同調させて精神世界の映像を映し出すのさ」

「そこは僕の権能の1つとしか」

 権能2~3%、技術97~98%ですが!



 とりあえず何食わぬ顔で日常を送ることになった。

 要は変な夢を見たけど覚えていないという感じでいこうと。

 今日も楽しい日常が始まるよ!


 ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッ…


 打刻と共に鳴るサイレン。

 またダンジョンですか?

「またか!?今度はなんだ!」

「小鬼が群れているそうです!負傷者3名で現在逃走中だそうです!」

「行くぞ!」

「「「「はい!」」」」

 課長と医療強行班4名、そして重装救命官がブースから駆け出していった。

「おはようございます。巽さん、何かまたって聞こえたんですが…」

「姫様おはようございます。午前2時から3度目です」

 巽さんがため息をつきながらそう答えた。

「えっ?もう封鎖した方がよくないですか?」

 いやマジで。駄目でしょこのペースは。

「こちらを疲れさせる狙いがあるのかと」

 だいぶ迂遠なやり方だなぁ…何の意味があるんだろうか。

「殺されたり攫われているわけではないんですよね?」

「ではないですね」

「慣れてきた頃に仕掛けるパターンかなぁ…次は巽さん達の班が出る感じですか?」

「そうですね。通常出勤チームが揃いますので」

「その時これを持っていってください。きっと役に立つので」

 僕はあるアイテムを巽さんに渡した。

「…あの、姫様?これはちょっと…」

 渡したのは提灯。

 しかも”火盗”と書かれている。

「何故火盗なんですか!?」

「せお姉様が作ったんですよ。昔を懐かしがりながら…そしたらちょっと…」

 うん。

 今回のアイテムは僕がやらかしたわけじゃない。

 せお姉様がやらかしたんだ。

 と言うわけで鑑定結果。


【火盗の提灯】RARE:悪事を暴くため闇を照らし千里を駆ける手助けをする。


 提灯に火を灯し掲げることによって提灯を中心とした半径3メートル以内の浄化と疲労軽減、微弱回復を行う。

 蝋燭は専用蝋燭のみ使用可能。約3時間で1本使うので注意。


 …いや、マジでこれだけ見ると破格なんですよ。

 これを掲げて走れば現場に着くまでの疲労が軽減され、更には微弱ながらも回復までする。

 そして何よりも浄化。

 せお姉様のアイテムでの浄化なので勿論強力だと思う。

 蝋燭は20号の和蝋燭で、この蝋燭が先程の効果の全てだったりする。

 提灯自体は軽い防御術式が籠められているだけの雨風に晒されても中の灯が消えない提灯だ。


 その事を説明したものの、巽さん含めたチームの皆さんは渋い顔をしていた。

 気持ちは良く分かる。でも、せお姉様が息抜きにとあの時代劇をまた見始めたんですよ!

 〇殺シリーズを阻止した僕を褒めて欲しい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る