335話 5dayPM8~課長を助けたい!
「うーん…」
せお姉様が難しい顔している。
虚空に浮かんでいる画面にはマンション全体の図面と、その横にデータらしきものがもの凄い速さで流れている。
「何かありましたか?」
「…ゆうくんの課長さん、だいぶダメージ受けているからどうしようかなぁって」
「え゛!?」
なんで!?
「いやどんな驚き方?多分淀みに取り込まれた分け御霊斬った際にスキル外スキル使ったんじゃないかなぁ…とんでもない代償があるから」
せお姉様が少し言いにくそうにそう口にした。
「…巽さんとか、課長とか?」
「何となく察した?そう。一方は命を対価に神格を呼び出せる『かも』知れないスキルで、もう一方は戦闘時間の分だけ敵に与えたダメージを疑似体験する代わりに概念すら一刀のもとに斬り裂く代物だね」
血の気が引く。
「えっ?課長大丈夫?膝枕いるかな?痛いなら回復で…」
課長が嫌がるかも知れないけど、抱きついて全力でいやしの波動を…
「あー…回復系は無理なんだ…でも疑似体験は頭部や内臓には行かないから!」
いや、それでもアカンでしょ…
「人の身で出来る最大級の攻撃だよ?下級邪神すら滅せる究極の一撃」
「兄さんでも無理?」
「君の兄さんの方が勝つ!あの人最近中級邪神討伐しているからね!?邪神像に入っているような悪魔とかじゃない本物の邪神!しかも中級!」
兄さん…人の身で神殺ししてるぅ…
「ゆうくん。これだけは言っておくけど、世間一般で言っている神殺し程度の話じゃないんだよ?僕らが言う神殺しとは完全消滅を言うんだ」
せお姉様が真剣な顔でそう釘を刺してきた。
「えっ?」
「神vs神の場合は概念戦争の更に上の話なんだ。人が神に勝ったと言うのは何段階も人の側に降りてきて…いわば超ハンデを付けた挙げ句同じ場まで降りてきての戦いだからね?しかもそれは神では無く神と呼ばれている精霊とかだし」
所謂舐めプして負けましたと…そっちの方が恥ずかしくない!?
「───ゆうくんが言いたい事が何となく分かるわぁ…舐めプの方が恥ずかしいとか思っているでしょ?」
バレた!?
「…あのねぇ…必要悪という事でわざと悪役ぶって倒される精霊とかいるんだからね?まあ、アウトな奴もいるけど。ほとんどが分け御霊だし」
「今回課長が倒したようなですか?」
「そう。ただ…数時間闘っていたからそのダメージも数時間分…あ、部長さんが入室した」
緊急事態だから何も言えないけど、普通にプライバシー侵害だよねぇ…
「あ」
突然せお姉様が何かを思いついたように声を上げた。
「僕たちのルールでは駄目だけど、異世界産なら問題無いかも」
どういうことです?
「このスキルはこの世界の理として『回復不可』もしくは『その理を越える事を許された特殊なもの』のみ癒やす事が出来るんだけど…異世界産は該当外かつ特殊アイテムとして認識されるかなぁと」
そんな都合の良い事あるんですかね?と、僕は訝しんだ。
「やらないよりはやった方が良いよね?」
「まあ、そうですけど………選定が…」
都合の良い物は一つある。ただ、アレは今試しちゃいけない。効果が恐ろしく高い代物だから。
そうなると…回復効果よりも快癒効果の方がいい気がする。
「緑茶があるか」
「えっ?緑茶?」
「緑茶なコーヒーですが」
「…………ええっ?」
うん。せお姉様。他の人に見せちゃいけない顔してますよ?
「ちょっと収穫してきます。飲みます?」
「………うーん………うん」
もの凄く葛藤してまでイヤなんですか!?
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