336話 5dayPM9~大丈夫?ギュッてする?
「……えっ?ナニコレ美味しいんだけど…」
恐る恐る一口飲んだせお姉様の試飲後、第一声である。
グラスに葉を一枚入れ、その上にかち割り氷を入れて水を入れる。
そしてマドラーで軽くステアすると全体がきみどりいろに染まり…何故かコーヒーの香りがしてくる。
まあ、何故かも何も、これが異世界では正しいと言うだけですが!
簡単便利に甘いカフェオレが飲めるよ!
しかももの凄い高性能な薬効付き!
「……うーわ、これ凄いや。こんな効果絶対後付けだね」
そう言いながらも既に飲み干しているという。
では僕も……うん。
「これ、糖度マックスコーヒーよりも甘いや…」
ヘタすると紙パックの激甘カフェとかよりも甘い。
「快癒効果があるから人体にダメージないとか反則じゃね?うちの常備ドリンクにどうかなぁ…」
「あまり取り過ぎると木が枯れて…あ、大丈夫ですね。二本あったので問題ない気がします」
なんかモサァ!って感じで生い茂っているし…偶にワサワサ動くし。
「えっと、では行ってきます!」
「ああ、ゆうくんこれも持っていって!」
そう言われて確りと密閉された黒いビニール袋を渡された。
「えっと、これは?」
「
「能力の無駄遣い…」
「働きに見合ったものを用意したよ!さあ!お使いに行った行った!僕は配信に乱入してくる!」
そう言ってせお姉様は部屋を出て行った。
ドアフォンを押す。
「はーい」
部長の声がし、扉が開かれる。
いや、確認しよう?まず間違いなく安全なのは分かっていても、確認しよう?
「こんばんは」
「えっ!?岩崎君!?」
「はい。せお姉様が課長の状態が思わしくないという事でお見舞いとせお姉様からの褒賞を手渡しに来ました」
部長を見る。
何故か滅茶苦茶動揺している。
なんで?
「えっとぉ…今、体を拭いているんだ…」
「………済みません!10分後に来ますっ!」
頭を下げてその場から逃げた。
───10分後───
リテイク!
と言うことで再度やってきました。
ドアフォンを押すと玄関で待機していたのか部長が扉を開けてくれた。
「ささ、どうぞどうぞ」
「失礼します…」
部長に案内されて部屋の中へと入る。そしてリビングに行くと、そこに布団が敷かれており、その上に課長が横たわっていた。
「っ、…ああ、岩崎か。済まないな。そんなに大事ではないんだが」
「いやいやいやいや…大事ですよね!?課長が戦闘中に倒した敵達が受けたダメージを全身に受けているって!」
「えっ!?初耳だけど!?全身筋肉痛とか言ってなかった!?」
「……ははっ、神様にはバレているよな…」
弱々しく笑う課長に部長が怒ろうと歩み寄って───
「あ、部長。済みませんがグラスに氷と水をたっぷり入れて来て貰っても?」
僕が声を掛けた。
「えっ?……分かったわ」
少し課長を睨んだけど、諦めたようにため息を吐いてキッチンへと向かって行った。
「……済まんな。っづ、殴られるかと思った」
そんな余裕はないはずなのに冗談半分でそう言い、笑う。
「はい、氷水…でもどうするのかしら?」
「この葉っぱをですね…一枚浸して…混ぜると」
水出し緑茶のような色になるのを二人が興味深そうに見る。
念のために葉を取り出してグラスを持ったまま課長ににじり寄る。
「はい。飲んでください」
「ぅえ!?」
「口を開けてー甘いですから驚かないでくださいねー」
「えっ!?ちょ!?んんんっ!?」
こくっ、こくっと飲んでいく。
「良いなぁ…私も看病してもらう時こうしてもらうんだ…」
部長が何か言っているけどスルーで!
と、
「……えっ?痛みが、だいぶ治まって…」
「流石異世界産反則薬草…効き目が違う」
そう言いたくなるくらい課長の顔色が良くなっていた。
「あと1時間耐えるのが辛かった…ありがとう、岩崎」
「いえいえ、どういたしまして。それとこれ、せお姉様から褒賞とのことです」
「褒賞?」
「刀と約束の品物だそうです。あと、この袋は使い捨てのマジックバックとのことなので、再利用できないっぽいです」
「そうか…ありがとう」
「はい!僕はもう少し謹慎続けますので、お二人とも体にはお気を付け下さい!」
僕がそう言って立ち上がろうとした時、課長がギュッと抱きしめてきた。
「課長?」
「…ありがとう」
「…はい。お大事になさってください。では、失礼しました!」
立ち上がって二人に一礼して部屋を出た。
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