701話 杏仁すとーる


「まあ、廣瀬さん無双は良いとして、いや良くないけど…」

 僕は息を吐く。

「ここはそんなに危険な状態なの?」

「いや、そこまでは危険な状態では無い。本部や本邸に喧嘩を売る阿呆はあまり居ないし、居たとしても外部の防衛ラインを突破できるのは上位中級以上だ。

 更に内部の箱や白獅子、それにこの世界の守りも上位世界レベルだから問題無い」

 じゃあさっきまでのやりとりは何?


「くっきーのかみさま!!クッキーがたべたいです!」

「えっ?」

 全員の目が僕を見ている。

 兄さんは…ちょっと出ている。

「じゃあ、みんなでクッキーを作ろうか」

『!?』

 マイヤが反応した。

『!!?』

 そして全員が反応した

「つくるひと~」

『はーーーーい!!』

 その場に居た全員が手をあげた。


 とりあえず、クッキーを4種作る。

 通常のプレーンクッキーと、カボチャクッキー、アールグレイクッキー、芋クッキーを作る。

『パパ!リムネーにもあげたい!』

「じゃあ沢山作ってお裾分けできるようにしようね」

『うんっ!』

「ふおおおおお!くっきーのかみさまからくっきーでんじゅ!」

「むじゅ…」

「こねこねだいしゅき」

「これがクッキーに…」

 感動している中、僕とマイヤは次のモノを作り始めている。

 それは、ドーナッツ。

 そしてマイヤは…杏仁豆腐。

 僕、最近気付いたよ。少しでも時間があればパン生地含め作って保管しておけばすぐに作れると!


「ここは、約束のクッキー世界?」

 なんか年長者がお馬鹿なこと言ってるよ?

 揚げつつ、マイヤに教えつつドンドン仕上げていく。

 クッキーも焼き上がった。

 うん。空間操作超便利。

 隔離して内部の熱も操作して…完成。

 ザラザラとクッキーを大皿の上に流し込んでいく。

 それをジッと見つめる白獅子一家。

 状態的には『待て』状態だ。

「マイヤ、急速冷蔵する?」

『うん!パパお願い』

 まあ、急速と言っても効率よく熱を奪っていくだけなんだけど。

 変な奪い方をすると駄目だからねぇ…

 ドーナッツもドンドン出来上がっていき、別のお皿に並べていく。

 その香りに白獅子一家がドーナッツを見る。

 はははは…ドーナツは3種類しか作ってないけどね!

 プレーン、オールド、シュガーだけ。

 でも香りは暴力的だ。クッキーもそうだけど。

 もう皆そわそわしている。

「マイヤ、先にリムネーの分確保しておいて」

『うんっ!』

 マイヤがそれぞれ5枚ほど確保する。

 すると白獅子一家は絶望したような顔をするんだけど…何で?

 そこにある物全部君達のだよ?

 マイヤが回収し終え、僕も準備を終えたので…

「さあ、召し上がれ」

 僕が言うと同時に全員がクッキーに群がった。

「クッキーだけじゃなくてドーナッツや杏仁豆腐も食べてね」

 一応そう声を掛けながらマイヤを見る。

『~~~!』

 杏仁豆腐を食べて悶えているマイヤ。

 マイヤは杏仁豆腐、初めてだっけ?あれ?

 でもまあ、悪い反応じゃないし…うん。

 あっ、ちーくん?が杏仁豆腐の香りに気付いたのかガン見してる。

「ただいま…って、なんか色々作ったな…」

 騒がしい中、兄さんが式神さんを連れて戻って来た。


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