928話 ライブ中!7,8曲他!
結局、みんなが戻ってくるまで20分掛かった。
佑那が「思ったより早いかなぁ」って…じゃあ短縮せずに初めから20分って言ってよ!もうっ!
さあ、気を取り直して次の曲。
巽さんリクエストの曲を歌う。
少し、いや結構暗めの出だしの曲だ。
「道があると分かっているのに見えないと言って行かないのは、傷付くことを恐れてるから」
明日も同じ日常なのだろうか。
1年後の自分はどうしているのかと。
5年後の自分はどうしているのかと。
10年後の自分はどうなっているのかと。
戻る道は分からないから、零れ落ちる涙をかき集め、せめて明日への光としよう。
今の恐怖と未来への不安を押し殺して進まなければならないと淡々と語りかける。
巽さんを見つめて歌い続け、歌い終わったと同時に巽さんが深々と頭を下げた。
さあ、次はこの雰囲気をぶち壊す歌ですよ?
「次の歌は…マイヤちゃんGo!」
『『いっくよーーー!』』
ステージ照明が一気に明るくなり、マイヤとリムネーがチアガール衣装で現れた。
『『みゃー!、みゃー!、みゅー!、みゅー!、Go!、Go!』』
さっきまでの雰囲気をぶち壊す明るいマイヤ大好きソングが会場を情緒不安定レベルに突き落とす。
『娘達サイコー!』
『お姉様最高!』
マイヤちゃーん!
満面の笑顔なマイヤに癒 や さ れ る が よ い!
その後数曲続き巫女にゃんこ奉納歌前の最後の曲となった。
…途中2回ほど休憩を挟んだせいでこの時点で1時間40分経過しているんだけど?
最後のシークレットソングは封印曲では無くて静留さん達と話し合ったオリジナル曲を歌う。
そして重大な問題が1つ。
基本、音楽構成自体は配信機器の方でやっているんだけど…この曲に関しては一部、具体的にはギターパート、僕ってなってるんだけど…
素人にギターさせるのはおかしくない?
しかも歌いながら。
プログレッシブ・ロックで行きましょう!…なんて言われて練習時間数日なんですけどねぇ!?
しかも箱庭メンバーが出て歌う感じだし。
内容を壮大に、とか色々言われたんだけどね?曲が出来たのって本気で2~3日前よ?
みんなには部分的な歌詞だけを教えて「ここの部分でこう歌って!」ってお願いするのが精一杯だったよ…
あと、箱庭と中継が繋がっているのでみんなのパート時には虚空に中継画像が出るようになっている。
この曲、14分あるんだよなぁ…
気を引き締めて───頑張りますか!
SIDE:会場
巫女様がギターを弾き出した。直後、曲が始まり、歌い出す。
歌詞は古語混じりの代物のはずなのに何故か全ての者にスルリと意味が入ってきたため誰も違和感なくその楽曲に聴き惚れる。
今を生きる大切さを、絶望的であっても、次の瞬間に死が待ち受けようとも前を向くことの意味を。
それぞれの宗教観でその意味を語る。
会場にいる聖女や女武者、そして草原の中央に立つ女神達が、今を生きよと訴え歌い継ぐ。
如何なる事も命を絶つ理由にはならないと。
今死の淵にいても1つだけでも成すことへの修錬を励むことで次の生では一歩先へと進めるのだと。
成せずとも蝸牛のような歩みとも良いのだからと。
14分の楽曲だったにもかかわらず聞いていた全員がその時の流れを認識出来ず、終わった時にはワンフレーズしか聴いていないとすら感じていた。
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