710話 み な ぎ っ て き た!


 SIDE:箱庭


『んしょ、んしょ…』

 マイヤが『箱』から神気結晶を取り出す。

『マイヤお姉様?一体何を…』

『パパが戻ってきたときビックリしてもらおうと思って!』

 マイヤはそう言いながら再び『箱』を開け、神気結晶を取り出した。

『マイヤお姉様。幾つ必要なのですか?』

『んー…50個!』

 数個程度と思っていたリムネーが固まる。

『えっと…どうしてそんな凄い量を?』

『パパが戻ってくるまでにおっきい像を造るの!』

『…楽しそうですね!』

 リムネーは目を輝かせ、『箱』から大量の神気結晶を取りだした。


「え?何事?」

 佑那が箱庭に入ってすぐに見た光景は、マイヤとリムネーの作業風景だった。

『『……』』

 無言で白銀のグミ?を捏ねる二人。

 ただし、その捏ねているモノから超強力な神気が奔流の如く流れ出ているせいで疑似神威となり近付くことが出来なかった。

「いや、え?何事?」

『佑那おねーちゃーん』

「はいおねーちゃんですよー!」

 マイヤのお姉ちゃん呼びに超反応で駆け寄る。

 物質が起こす神威も。佑那のおねーちゃん承認欲求の前には無力だった。

『おねーちゃん結界張れる?』

「えっ?無理…ではないけど…自信ない」

『そっかー…残念』

「白城さん呼んでこようか?」

『!?おねーちゃんお願い!』

「おねーちゃん頑張る!」

 佑那はデレッデレな顔で白城を呼びに駆け去っていった。



「…何をしているんですか、貴女方は…」

 白城は目の前のとんでもない光景に軽い目眩を覚えた。

『結界張って欲しいの!』

『神気の流出を抑えるためにも周辺を囲う必要がありまして…』

「なるほど…分かった。台周辺を覆い手の周りだけ開けるようにする」

 それだけ言い、白城は台の上に結界を展開した。

「うわ、体感できるレベルで神気が下がった」

「少なくとも昨日、一昨日であれば倒れたレベルだろうな」

「私もそんな気はしてた。この神気は異常でしょ…」

「しかし彼女達は何を作っているんだ?」

「あの透明粘土?ジェル?は何なの?」

「神気結晶だ.この世界のものだからと権限を使ってああいった状態にしたんだろうが…反則ギリギリだな」

 苦い顔の白城に佑那が首をかしげる。

「反則ギリギリ、ですか」

「神気結晶は加工不可。世界の管理者が作り替えるが精一杯だ。しかし、あれを食べ物の一つと誰かさんが言いだした結果、現状この世界ではアレは「食べ物で遊んでいる」判定であり、食べやすく寒天ゼリー形成をしている……みたいな状態だな」

 無理矢理が過ぎない!?

 思わずそう叫びそうになった佑那だったが、それをグッと堪えた。

「マイヤちゃん、リムネーちゃん…何を作ってるの?」

パパお父様の像だよです!』

 異口同音の回答に佑那と白城は「「そっかー」」とちょっと遠い目になった。

「でも、その量だとそこまで大きくならないんじゃないの?」

『膨らませるの!』

『膨らませ、中は別のモノで満たしますのでご心配なく』

「…参考までに、どれくらいの大きさを予定しているんだ?」

『『5メートルかなぁですね』』

 その大きさを聞き、2人は揃って礼拝堂を見、察した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る