711話 奇跡のたからもの


『できた!』

 マイヤはそれの足元でドヤ顔をする。

『ふわぁぁぁぁ…』

 リムネーは目を潤ませながら食い入るようにその姿を仰ぎ見る。

「拝観料は、如何ほど!?如何程支払えば…」

 白城は興奮しすぎて軽くバグり、

「いやぁ…これ、大丈夫?兄さん卒倒しない?元の兄さんと巫女姉さんワンセット像なんて…」

 佑那は出来上がった『シスター姿の女性化友紀が椅子に座った巫女姿の男性友紀を後ろから抱きしめている像』を見上げ、力なく呟いた。


「あ、でもマイヤちゃん像を巫女兄さんの肩に作って乗せれば親子像とも見えるね」

『『!!??』』

 もの凄い反応をする2人に佑那は「えっ?もしかして、気付いてなかった?シスター姿の女性化兄さんって明らかにリムネーだよね!?」と逆に驚く。

「じゃあ、今のこの像にタイトルを付けるとしたら?」

『パパとママ!』

『仲良しなお父様とお母様』

「うーんこの良い子たちは」

 佑那は苦笑する。

 本当に、純粋に友紀のことが大好きなのだと改めて実感したためである。

「巫女兄さんの肩に小さく穴を作ってマイヤちゃん像をジョイントすれば良いんじゃない?」

『リムネー!』

『はいっ!5つでしょうか』

『6個!』

『分かりました!』

 リムネーが『箱』へと駆けていき、マイヤは像をジッと見る。

『…マイヤもパパに抱きついたら良いのかな?』

 構図で迷っているのかマイヤは暫く悩み、

『マイヤはパパのお膝の上の方が良い!』

『マイヤお姉様、こちらを』

 リムネーが神気結晶をマイヤに手渡す。

『リムネー、また一緒にこねこねしよ?』

『はいっ!』

 マイヤとリムネーが神気結晶を一つの塊にし、こね始める。

「ああ…仲良し夫婦も仲良し親子も尊い…はっ!?ではこれはこれで今のうちに記録を残しておかなくては!?」

「あ、私も写真撮っておかないと…とりあえず30枚かな?」

 慌てて軍病院へと戻る白城と、スマートフォンを取りだして色々な角度から写真を撮り始める佑那。

 自由すぎるメンバーだった。



 箱庭内で騒ぎが拡大していく。

 神兵や部隊員達が像の周辺に集まり祈りを捧げたり感情が爆発し全力五体投地をしたりと騒がしい。

 更には石長比売までやってきて大変な状態となっていた。

 そんな中『『できたー!』』とマイヤとリムネーが歓声を上げた。

 と、

    えっ?

 その場にいた制作したマイヤ達以外の全員がその像を見て困惑した。

「えっ?あの…体の2/3しか無いように見えますが」

『うん。だってパパに抱きつく感じだから全部あったらおかしいよ?』

 そう言いながらマイヤは自身の像を持ってフヨフヨと像まで飛ぶ。

 そして椅子に腰掛けている膝から腰の部分に自身の像を乗せた。

「……ピッタリ…えっ?えっ?」

 元からそうだったのではないかと錯覚するレベルの出来映えだった。

『うん!ピッタリ!』

『あああ尊いっ!流石ですマイヤお姉様!これは確実にお父様が喜ばれます!』

 ドヤ顔のマイヤをリムネーが全力で褒め称える。

「記録を!記録を急げ!」

「ぬわあああああっ!可愛尊い!写真!動画っ!ありとあらゆる記録媒体で!」

「尊さが…マシマシです…」

「主様が、ちょっと苦笑した気がするのです…いえ、顔が少し変わってます!」

「そりゃあ聖遺物どころか神器…尊器とうとき…もう、私程度の語彙力ではこの主様の像をどう呼ぶかなど…はふぅ」

 この騒動はその後礼拝堂に安置するまで約1時間程続き、更に安置後も撮影会などで2時間は続いた。


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