289話 2dayPM4~夕暮れ時の来訪

 夕食直前、部長と課長。そして巽さんが来た。

 なにげに部長は初めてかな?あれ?みんな少し余裕なさげですが…

「ようこそ神域へ。部長、大丈夫ですか?」

「ええ…まだ大丈夫。ただ、入口で神様と出会して…」

 あ-…うん。神様によってはいらない悪戯するから…あ、でも今フロアスタジオではゆる姉様とせお姉様が居るはずだし…

「それがなぁ…絶対に神様のはずなんだが、普通に入口から入って食堂へ入って行ったんだ…」

「えっ?外から?」

「姫様。食堂を居酒屋感覚で使う神様に心当たりは?」

「えーと?」

「入るなり「生と〇ッピー!」と言っている声が聞こえてきたので」

「心当たりが多すぎるんですけど、外から?」

「はい。後ろ姿しか確認出来ませんでしたが、程よくくたびれたスーツを着た方でした」

「───それって、屋台村とかそういった所に居そうな雰囲気の人ですか?」

「えっ?あ、はい。そんな雰囲気はありました」

 天之御中主神様やんけぇぇぇっっ!!

 僕は慌ててスタジオに走った。



「緊急事態です!」

 バンッ!と扉を開けてスタジオに乱入する。


『姫様乱入!』

『謹慎が解かれた?』

『姫様ヘルプ!』

『新鮮な姫様!もう思い残すことは…いや、生の姫様に会うまでは!』


「えっ?何?どうしたの?」

「職場の人から何か言われた?」

 ゆる姉様とせお姉様が少し驚いた顔をしているけど、それどころじゃ無い。

「天之御中主神様が、1階食堂におられるかも知れません」

「「はぁ!?」」


『だれ?』

『アメノミナカヌシ?』

『主神オブ主神やんけ』

『まったく知らない…』


「いや、いやいやいやいや…ゴールデン街からこっち来た!?まだ食堂はプレオープンだよ!?」

「程よくくたびれたスーツ姿の方が外から普通に入ってきて食堂に入っていったと。そして「生と〇ッピー!」と言う声が聞こえたらしいのです…」

「あ、うん。100%そうだわ」

「うわぁ…断言するんだ」

「ちょっと待ってね…あ、うん。一階に居るねぇ…ゆうくんが前に買い置きしていた居酒屋さんの酎ハイシリーズを飲みながら雑に作った焼き鳥を要求しているっぽい」

「…僕、自室でオーダーされたモノを雑に作ってボックスに入れるので…それで良いですかね?」


『雑にてw』

『巫女様のツマミ!』

『調べた。本気主神の上の神ですやん』

『そんな神がゴールデン街に居た!?』

『なあ、冗談と思って聞き流して欲しい。もしかしてその人ゴールデン神かも』

『ゴールデン神www』

『都市伝説やろ?入店してきたその人にお酒を一杯奢ると良いことがあるって』

『マジであるんかいそんな噂w』


「あー…うん。御免。お願いして良い?あと、こっちから伝えておくけど、お酒のストック使っていい?安酒の方」

「あ、どうぞ。僕基本飲みませんし稀少品は無闇に飲まれないように別の所に確保していますから」

「あー…わかった。連絡完了」

「では、戻ります!」

 僕は慌てて戻った。



「……なあ、岩崎。私達はまた後で来ようか?」

「いえ、この三品を作ったら余裕が出来るので申し訳ありませんがあと5分程お待ちください」

 焼き鳥5点盛りとたたきキュウリ、ごまだれ豆腐を作り上げ、キッチン横のアイテムボックスに叩き込む。

「済みません、お待たせしました。それと情報提供ありがとうございました」

「なあ、あの方は…そこまでマズイ方なのか?」

 恐る恐るといった感じで聞いてくる課長に僕は首を振る。

「危険は無いですが、最低限伊邪那美お母さんより上です」

「「「は?」」」

「天之御中主神様です」

「「「はぁっっ!?」」」

「外界に平然と出ることが出来、更には居酒屋等に出没する。そんな情報があったので慌てて確認を取ったのですが…間違いないと」

「下手をすると天照大神どころの話じゃ無いな…確かに」

「あとは安酒大好きっぽいです」

「………姫様。こちらを」

 巽さんがテーブルに業務用のウイスキーボトルを二本出した。

「ハイボールにしてお出しすれば喜ばれるかと」

「もしかして、こんな事もあろうかと…ってやつ?」

「いえ、課長が昨日購入した和菓子を渡し忘れたという事でしたので、私はこちらを神様方へと思い…」

「ありがとうございます!」

「私からは巽が言ったように、あの和菓子屋の菓子だ」

「やった!ありがとうございます!」

「ええっと、私はフランスの土産なんだけど…」

「あっ!部長あちらは大変だったのでは!?」

「…うん。無茶苦茶引き留められたの…」

 あっ、目が死んでる。

「済みません。このボトルだけでも下に送ります」

 ボトルを抱え持ってキッチンへと急いだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る