54話 TS化した僕の兄が女神様にドン引きされる

 先に神域に入り、二人を入れる。

 ………うん。兄さんは普通に「失礼する」といって入ったけど、佑那はドアから中に入れずガクブルしていた。

[あの…うちの妹が入れないみたいなのでキャラ作りやめてもらって良いですか?]

「「キャラ作りって言ったら駄目だよ!」」

 あ、圧が霧散した。


 リビングに入り、改めて紹介をする。

「初めまして、というべきか。この世界の神々を救出する作業をしている異界の神、ミツルギという」

「同じく、異界の神ユグドラシルだよ。僕らは職業システムやスキルシステムも君らに提供しているんだ」

 真面目な雰囲気のミツルギ姉様にニコニコと笑顔のゆる姉様。

「あー…僕はこの国の神でちょっとややこしいんだけど祓戸の神とでも呼んで欲しい」

「私は伊邪那美よ」

 素っ気ないせお姉様と微妙に人見知りをしている伊邪那美お母さん。

 神々の自己紹介に対して佑那は完全にあたふたしている中、

「自分は岩崎結羽人。友紀の兄で、彼女は佑那。自分と友紀の妹です」

 兄さんはまったく動じず普通に対応していた。

「───流石、超越者は違うわね」

 ミツルギ姉様が眼を細めて何かを確認している。

「どんな場数と戦闘をこなしたらこんな短期間でここまで成長できるのよ…絶対奴等殺しに掛かっているはずだけど」

 えっ?殺しに掛かって…?

「百鬼夜行なら2度遭遇しました」

「うわぁ…異次元の戦闘者がいた…この子一人で全てのダンジョン崩壊させられるんじゃない?」

[せお姉様。それは流石に無理では?]

「無理でしょうね。最近は下層より下に行こうとすると入口が極端に狭くなって入れません。まあ、その分鉱石等は多く採掘できるので問題はありませんが」

 兄さん、ダンジョンからほぼ出禁喰らっているってどんだけ…

「もしかしてここ数ヶ月の話?」

「はい。契約不履行の神を殴り倒した後なので…四ヶ月ですね」

 今なんか凄い事をさらっと言った!?

「四ヶ月か…その契約とは?」

「とあるダンジョンの最深層部にいる異形の獣を倒し、奪われた勾玉を持ってくるようにと」

「…ほほう?」

「ちなみにこれです」

 そう言って兄さんはプライベートボックスから勾玉を取り出した。

 なんだかせお姉様がそわそわしている。

[結構大きめだね…10センチくらい?]

「どうだろうな。祓戸様、もしよろしければお納め下さい」

「え゛っ!?」

「契約は不履行でこれはその神のモノでは無くなりましたので」

「良いのかい!?」

「これがあれば何かと楽になるのではと…」

「勿論だよ!各社の分け御霊に力を送って邪気を弱められる!」

 せお姉様が大はしゃぎしている中、兄さんは少し考える仕草をしていた。

「…もしやとは思いますが…これらもその類でしょうか?」

 そう言って兄さんは十数点のアイテムをテーブルの上に置いた。

「「「「………」」」」

 全員が絶句してる。

[…兄さん。これらは?]

「ん?最深層部にいた奴を倒すと偶に落とすから売らずに持っているんだ」

[…えっとね、兄さん]

「ん?」

[現在協会が把握している探索者のうち、深層部で活動している人はいないんだ]

「…何?」

[正確に言うと、二人いたんだけど、一人は深層部でチーム8人のうちその人を含め6人がモンスターによって殺害されている。もう一人は一線を退いている…こんな所だよ]

「いや、深層部には数人出入りしているぞ?うち一人は襲いかかってきたから両手首を使用不能にしたが…」

[それ死刑宣告じゃあ…]

「いや、すぐに腰に掛けていた閃光手榴弾を外して逃げたから生きては居ると思うぞ。蹴り返したが」

[蹴り返した……兄さん危険すぎる事してるじゃ無いか!]

「数年前は大変だったが今はそんなに危険な事は無いぞ?ずっと言ってるだろ?労働者、ソロの採掘者だと」

 ───みんなが理不尽の権化って言う理由が分かった気がする。


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