397話 解決と問題
SIDE:日本
光りがおさまった時、そこには失った日常の町並みがあった。
ゆっくりと、そこにいた皆はそれを感じ、理解し、やがて歓声や雄叫び、あるいは涙で表した。
第一支援部隊は班を二つに分け、炊き出しを行う。
それは友紀が出発前に作って見せた二種類のスープ。そしておにぎりだった。
泣きながら頬張る者、最愛の家族と分け合う者、あるいは───
「何故、こんなにも遅かったんだ…もっと早ければ、俺の妻は、息子夫婦は…」
配給の食糧を払いのけ、抱えきれない想いを怒りとしてぶちまける者…
「そうですね。助けることが出来なかったのは申し訳ありません。ただ、我々はこの国の兵では無い。神の、巫女の兵です。ただの善意の協力者です。
要請を受け最短でここに駆けつけることは出来ましたが、県内の主要拠点を支援せねばならないのです。
それに貴方は神々に対し何を行い、今回匿ってもらったのですか?当然だとは思っていませんか?
人々が勝手に神が無償の愛を与えてくれると、無限の恵みをくれると、庇護すると、そう思っているようですが…ここ数百年どれだけの人間が神を蔑ろにしましたか?蔑みましたか?それでも神々はあなた方を守ってきた。
今回もそうです。ただ、貴方はそれすら当然の如く甘受し危機意識を持たなかった。
ここ数年妖怪や死霊による被害があったにもかかわらず他人事として危機意識を持たなかったツケがこれです。
神は市内各所に点在している稲荷社等に明かりを灯し誘導したという情報もあります。危機意識も何もなくただ何となくで動かなかった貴方に文句を言う資格は無い!」
重装救命士の言葉に辺りが静まりかえる。
戦場はここだけでは無い。
自分たちがこうしている間にも犠牲者が増えている可能性。
目を逸らしていた現実を突きつけられた。
「───自衛隊と民間支援の部隊が今日明日中に到着するはずです。市内は神々の緊急措置で同じ事が起きても3ヶ月は守られます。もし脱出をするのなら秋田市方面へどうぞ。恐らくそのルートを自衛隊は通ると思われますので」
それだけ言うと重装救命士は装甲車の方へと去っていった。
SIDE:スタジオ
「…ねえ、せっちゃん」
「ん?なーに?」
「感謝ってさ、しないものなの?」
「どゆこと?」
「いや、今、弘前市の映像で、支援部隊に対してお礼言った人って、簡単に数えられるくらいしかいなかったんだけど」
「んー…まあ、精神的な余裕が無いか、普段言わないからこういった時に浮かばないんじゃないかなぁ…ゆうくんだってお礼を言って欲しくてこんな活動しているわけじゃ無いだろうし…ゆうくん?」
「………ぃです」
「「?」」
「今の人、すぐに審議の石板へ連れて行って!」
「「!?」」
友紀の激昂にユグドラシルと祓戸は驚く。
「ゆーちゃん?何を視たの?」
「あの人、自分の奥さんと子どもを…車に残して、自分だけ社に駆け込んでいます…」
「「………」」
『…待って。自分を正当化するために、被害者感情を誘導しようと?』
『いや、いや待て待て。え?ちょっと感情が』
『そりゃあいくら何でも』
「───うっわ…本当だ。小鬼に車を止められて慌てて降りて走って逃げてる…」
「あれ?奥さんと子どもさん、無事じゃね?」
「あ、本当だ。へぇぇ…尊勝陀羅尼の御守りを持っていたんだぁ…しかも阿闍梨職の人からもらったのかぁ」
「これ、石板で詳細やったあと、事実として出した方がよくない?」
男が複数の人に捕まり、審議の石板へ連行され、そして詳細が明らかとなった。
それから十数分後、その男性の妻子が到着し、事実…どころか「何で生きているんだ!?」と自爆発言をし、その場の雰囲気が最悪になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます