570話 世界意思と、友紀の考え
その後兄さんに幾つかの質問をした後、お夕飯など色々あって…
「───さて、箱庭さんについて話し合いたいんですけど、兄さん?」
「箱庭さん?兄さん、とうとう世界にさん付け?」
「そうしないといけないトンデモ事態が起きたんだよ…兄さんが殺されかけた。この箱庭世界に」
「………は?結羽人兄さんって死ぬの?殺せるの?」
「殺されたら死ぬし、一般人と同じようにどちらかというと死にやすい人間だぞ?」
「「……」」
何だろう、あまりにも稚拙な嘘を聞いた気分だ。
兄さんとしては正直に言っていると思うんだけど、なんかこう…乖離が凄い。
「…と言うことは、この箱庭世界自体に意思があると…ガイア理論みたいなもの?」
「あれとは少し違うが、世界の意思という意味ではそうか」
「でもそれっておかしくない?創造主が兄さんで、世界と意思の対立が起きたわけでしょ?」
「本来はその意思というのは植物的なんだ。まあ、無いわけではないんだが…ここまでレベルの意思はない」
「で、その世界の意思がやらかしたと」
やらかしたねぇ…
「ああ。ぶっちゃけてしまえばこの意思の力があれば友紀がどれだけ楽になっていたか…全力で殴りたいくらいだ」
真顔でそう言い切る兄さん。
「うわぁ…」
「そんなに?」
「ああ。まず管理権限の最適化。これは間違いなく修復できた。これが最適化できず、外からの介入が出来てしまう可能性があったから今回の騒ぎになった」
「それを何とかしようとした結果が結羽人兄さん殺人未遂と」
少し呆れたように呟いた後ため息を吐く佑那に、僕は微かに湧き出た苛立ちを口にする。
「僕この世界好きになれなくなったよ…」
「うわ、兄さんがそこまで言うなんて…」
言いたくもなるよ。
もしこの世界の意思が幼かったらここまで怒らない。でも、この意思の成長度合いは違う。
だからこそ言わないといけない。
「だって、大切な家族を殺されそうになったんだよ?助けようとしていたのにそれを拒否した挙げ句殺そうとしていたんだから」
「例え私や兄さんが通り魔に殺されたとしても、相手を憎まないであろう兄さんにそこまで言わせるとは…箱庭世界、恐ろしい子!」
いや、佑那。
兄さんや佑那をどうにかできる相手って、地球に存在するの?
佑那ですら通り魔(ミサイル)とかレベルだと僕思うんだけど…でも、ただただ悲しいだけで、憎むかって言うと…うん。
でもこれは違う。
「恩を仇で返すってのは僕好きじゃ無いし」
「…地球の人類がお前に対してずっとそれやっているんだが?」
「あー………そうだね。その件に関しては?」
「全員が悪いわけではないからそれは良いの!」
だって知人、職場の人、商店街の人とか悪い人そんなにいないし、数十億分の何パーセントかって事だと思うから。
でも世界の意思はその世界そのものだし。
「大切な家族を受け入れないというのなら僕たちが出て行くしか無いよ」
「───まあ、神々の中にも創った世界があまり宜しくないと遺棄することがありはする。やりたければ良いんじゃないか?」
『お父様!』
リムネーが慌ててやってきた。
何かあったのかな?
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