571話 ヤンデレと、ヤンデレ蒐集家

 リムネーを落ち着かせようとするものの『これっ!これっ!』と騒いでいる。

「見えるようにして貰っても?」

 僕はリムネーに優しく語りかけ、リムネーはスクリーンを可視モードにした。

「「「うわぁ………」」」

 そこには現在進行形でビッシリと『ゴメンナサイ』『ステナイデ』『ユルシテ』と言う文字が交互にひたすら表示されていた。


「いや、病んでんじゃん!」

「だから病んでるんだよ」

「これは…すごいねぇ…」

 多分僕が兄さんの指示通りにメッセージブロックをしているからリムネーに被弾した…待て。

「もしかして、マイヤの所にも同じような感じで?」

『はい…マイヤ姉様は『放置!』とのことでしたが…』

 マイヤも兄さん大好きだしねぇ…

「ほら佑那。ヤンデレ専門として対処法を教えてやれ」

 兄さんが佑那に無茶振りをしてきた。

「専門じゃないんですけど!?」

「友人に2人ヤンデレが居るだろうが。ヤン百合ホラーなんて誰得だ?」

「結羽人兄さんなんで知ってるの!?」

「その内一人には往来でサバイバルナイフ突き立てられたからな」

「「えっ?」」

 僕と佑那の動きが止まった。

「刃渡り11㎝で多機能サバイバルナイフ呪詛付き。佑那の元クラスメイトと知っていたから迎撃するのもなぁ…って事で目測ずらしと光壁、体捌きで刺さっている感を出したが…

 「これで佑那お姉様と一つになれる!」ってはしゃいでいたぞ」

「兄さん、それヤンデレや無い。サイコパスや…」

 佑那が真っ青な顔でそう呟く。

 ネタを言う余裕はまだあるのか…しかし、

「佑那…随分なお友達がいるんだね…あと、僕除外されてる?」

「ソイツ的には友紀は女の子判定だったんだろうな…」

「っ!そんな事よりもこの世界の事です!」

「女性関係はしっかり清算しろよ?」

「何もしてませんっ!で、友紀兄さんとしてはこれ、どうするのですか!?」

 そう言われてもねぇ…

「放置で良いんじゃない?」

「…あかん。怒ってらっしゃるぅ…表情が無い!まったく表情が無いですよ!?」

『ひぅっ!?文字が早くなってます!』

 リムネーが涙目で僕を見る。

 ───そうだね。これはホラーもしくはウイルスを疑うレベルだよね…

「神様方含め全員一度マンション側に避難してもらうとか。人質にされたら困るし」

「その心配は無いぞ」

「?」

「そのための箱でもある。何か仕掛けてきたら半径10キロ内の防衛。それは空と大地も判定内だ。権限書き換え後に敵対判定を完全自動設定にしたから問題無い」

 何が問題無いんですかねぇ!?

「しかし、切り捨てるにしても弁明の余地含め機会を与えてはやらないのか?」

「僕としては一発アウト判定だし、事ある毎に同じ事しそうだから」

「…この世界は幼子のようなものだぞ?まだそこまで制御ができていない。それは分かっているだろう?」

「それは───」

「許せとは言わない。ただ、一度で良いから機会を与えてやってくれ勝手な行為を禁止すればいい」

「……攻撃された側の兄さんがそう言うなら…でも、今後恩を仇で返すようなことは駄目!」

 キッパリとそう言うと、リムネーの可視スクリーンの文字が止まり、『ありがとうございます!』『主様に感謝を!』『貴方様に更なる永遠の忠誠を』と言う文字が延々と流れ始めた。

 リムネー…そんな目で僕を見ても、僕も困るよ…


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