42話 TS化した僕は協会前でテロを起こす?
どうしてこうなった…
僕は頭を抱えたくなった。
周辺には探索者を含めた多くの人が膝をつき、祈るような姿勢で僕を見ている。
何故、どうしてこうなったのだろうか。
まあ、滅多にない事が連続で起きたせいですけどね…おのれゴ〇ゴム!
修道服着て厳かな雰囲気の中、こんな事を考えている僕を責めないでください。
現実逃避しないと色々辛いので。
あと、せお姉様…これどういうことか説明プリーズ。
~~30分前~~
会議を終えて自ブースに戻ってきたら医療強行班と医療班の人達が慌ただしく動いていた。
「何があった?」
課長が声を張り上げると武装準備をしていた強行班の人が作業を止めて課長に駆け寄って来た。
「関東2区ダンジョン中層域で石蛇を討伐した際、周辺に呪詛毒を放出し消滅。上級探索者2名と救援に当たった関2区の強行班3名が呪詛毒に罹患」
「向こうでの解呪はできなかったという事か」
「はい。しかもこの呪詛毒は周辺に伝播するタイプとのことで、現在特車隊が5名を連れてこちらに向かっています」
…なんで?
直で関2区のダンジョン対策分室に行って解呪してもらった方が早いよね!?
僕の疑問と同じ事を思ったのか、課長は険しい表情をする。
「進行が早く間に合わないのか?それで中務省からこちらに向かっているのか?」
「…強行班の中に大聖女の福田課長補佐が…参加しており」
もの凄く言いにくそうにしているけど、これアウト案件じゃね?
聖者や聖女の上位は大聖者・大聖女という安直な名称で、その上が使徒となっているらしい。司教とか位階的なものじゃ駄目だったのかな…と思うけど、人のシステムとは違うから仕方ないかな。
───なんて現実逃避していたら話を聞いて察した課長が険しい表情のまま目を瞑った。
「私に回ってきたという事か」
「はい…異物法に基づいて周辺へ無差別に伝播する恐れのある場合は隔離もしくは排除を…と」
課長のスキル外スキル破邪一刀で呪いもしくは取り憑いているモノがどうにもできなかった場合、完全隔離か物理的な排除を行わなければならないという事だ。
広がるタイプの呪いに関して厄介なのは一カ所で複数人数隔離すると蠱毒現象という簡単に言うと濃縮化が起こってしまい、そこから収拾がつかない厄災の怪物が生まれることがある。
数年前にお隣の大国が感染型呪具を一カ所に集めた挙げ句それに感染した人も面倒だからと同じ所に隔離。結果、妖魔が発生し、数万人の人命と一都市が半日で消えて無くなった。
───そう考えると、うちの会長さんがやらかしたことって、どんだけヤバイ事なのかって…ねぇ。
人が贄となって呪詛等が濃縮されるという説が主流だから人がいなけりゃ多分大丈夫!って訳でもないのに。
ボーッとそんな事を考えていたらメールがポーンと
【今まさに使徒としての威光を見せつけるのです】
───えっと、メッセージの宛名がないのですが…どちら様でしょうかね?
「岩崎、どうした?」
[えっと、今、多分僕と関係していない神様から使徒としての威光を見せつけなさいとメッセージが…課長。このシリアス状態がシリアルになるのでそのチベスナ顔は止めてください。僕の心にキます]
対呪いであれば巫女服で実績があるのだけど、あのメッセージは多分修道服をチョイスして欲しいんだろうと予想。
修道女を選択し、ちょっと気合いを入れる。
課長の方も一応念のためにと完全武装だ。
[一応って何!?]
「だってなぁ…お前さんの後ろに居る神々相手に普通より少し上程度の妖魔や呪物が程度でどうにかなるのか?」
[いや、今回メッセージの宛名がないのでまあまあ不安ですよ?]
「しかし神性であることは間違いないのだろう?」
恐らくは。賛美歌モード使えって事だよなぁ…
「もうすぐ到着とのことです!ただ、状況が悪化しているため建物内部ではなく大駐車場での対処をお願いしたいとのことです」
[………えっ?不特定多数も見ている状態の中でこの初めてのモード使うの!?]
「行くぞ。スタッフは大駐車場の場所確保と周辺の人員整理を急げ!巽は岩崎の側で警護だ」
僕達は急いで大駐車場へと向かう。
「姫。大丈夫ですか」
[ぜんぜん大丈夫じゃないけど、助けを求めている人がいるのなら何とかしなきゃね]
カウンターを抜け、正面玄関より出て大駐車場へと向かう。
職員が慌ただしく動いているため、探索者や訪れていた人達が何事かと僕達の後を付いてくる。
「あの車です!」
指さす方向に法定速度を超えているであろう中型バンが駐車場に入ってきた。
そしてその後ろから公用車と思しき車も入ってきた。
「岩崎。準備は良いか?」
[あの車ごとで良いですか?]
「ああ。任せる」
[…では、いきます]
息を吐き、精神を集中しモードチェンジをすると同時に車を基点として周りに教会内部と思しき蜃気楼が姿を見せた。
車の側には大きなパイプオルガンがあり、それが曲を奏で始める。
[Amazing Grace…]
周辺一帯から音が消え、ただパイプオルガンの演奏と僕の歌声だけが響く。
天から一筋の光が車に向けて降り注ぐと同時に車内から一斉に黒い靄が吐き出され、光に触れると同時に浄化されていく。
───この歌を捧げます。神の恵みよ、この者達の苦しみを癒やしてください。
歌い、祈り、祈り、歌う。
歌い終えたと同時に鐘の音が聞こえ、車から無数の白銀の粒が天へと昇っていった。
モードが自動的に解除され、辺りに生活音が戻ってきた。
しかし、誰も動かない。
[えっと、巽さん。終わったと思うので、確認の方お願いします]
側にいた巽さんに声を掛けながら振り向くと。
うわっちゃあ……
巽さんは平伏していた。
そして車のドアが開き、中から5人全員が出てきて…
巽さん同様平伏した。
いやマジで勘弁してください。
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