43話 TS化した僕はメッセージに振り回される

 課長に抱き上げられて囲みを突破して協会内へ逃げ込めた。

 課長格好いいな、と思う以前に、太股やお尻を撫でるのはセクハラだと思います。

 でも右腕に課長のお胸の感触が…

 ちなみに巽さんは殿を務め、カウンター前で「信者諸君!防壁展開!」と叫んでいた所までは見えた。

 防壁展開って何?信者って何!?

 と、若干混乱しつつも自ブースへと戻ってきた。

「どうぞお姫様」

[課長ありがとうございます…]

「しかし…凄いな。あの気配から妖怪崩れどころか零落した土地神クラスだぞ?」

[そこまで分かるんですか!?]

「ああ。あの類は倒されたように見せかけて最後に攻撃を与えた相手に取り憑き、呪詛を伝播させる魔性だ。恐らくそちらの祓戸の大神が確認しているだろうが…」

 あ、メッセージ来た。

【出番取られて悔しいけど、信仰心の9割はあっちの神にではなく君に流れたからザマァ!】

 ……うん。何言っているのか分からない。

【あと、あれは神のなり損ない。でも条件次第では国一つ滅ぼせるようなモノだから早期対処は良かった】

[神のなり損ないだけど、条件次第では国一つを滅ぼせるようなモノだったそうです]

「…だろうな。私が出た場合はあの5人の命と引き替えに滅ぼす事しか出来なかっただろう」

[それができる時点で尋常じゃないんですが…]

「私は滅ぼすことはできても救うことはできないよ」

 苦笑する課長に僕は少し泣きそうになる。

「ああ、自虐で言ったわけではない。純然たる事実だからな?破邪一刀はその一太刀で敵の邪念ごと葬り去るという一切合切斬り捨てるタイプなんだよ」

 そこまで言うとため息を吐いて、

「あと少しでその先に手が届くとは思うんだが、こうも仕事が忙しくてはな…」

 努力しようとしている人のための修行場とかあれば良いのになぁ…

 何か言おうとした時、メッセージが届いた。

【作る?極級修行場。トレーニングジムって言うんでしょ?】

 ───せお姉様。監視しすぎじゃない?仕事してる?あと修行場の前に怖い漢字二文字が付いているトレーニングジムなんて無いからね?



 グダグダな場の雰囲気になってしまったところで強行班の尾梶さんが来た。

「課長。お客様がお越しになりました。」

「ああ、今重要な話をしているので済まないが会議室へお通ししろ」

「畏まりました」

[即答ですか]

 僕の台詞に課長は渋い顔をする。

「ああ。被害者五名と中務省ダンジョン対策本部か怪異等調査委員会の人間だろう。お前さんも…と言いたいところだが残念ながら食事休憩だな。そして午後からは重要な仕事が満載だ。仕方ないが私の方で全てやっておこう」

[うわぁ、棒読みだぁ…]

「わざとだしな」

 ニヤリと笑い、席を立った。

「巽が来たら午後の打ち合わせを頼む。できれば行動予定も出して欲しい」

[すぐ作成します]

「頼んだ」

 課長は僕の肩をポンポンと軽く叩いて会議室へと向かって行った。

 僕は急いで行動予定を作って午後に備えておこう。

 あと、嫌な予感がするので念のために男装モードに切り替えておく。

 あの姿が目立ちすぎたから単体でボーッとしていたら捕まりかねないし。


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