【800万PV感謝】ダンジョンのある現代でTS化した僕は全力で癒やし要員となる

973話 友紀なりの解答。そして模範解答、来たる

「しかし悪霊となったら払うか浄化させるか…成仏させるしか方法はないんじゃないのか？」

　課長が難しい顔で唸る。

「確かに浄化もしくは成仏、昇天と方法はありますが…課長は払うと仰いましたが、払うというのは大まかに２通りありますが…ご存じでしたか？」

　課長、佑那、幽霊さんが首を横に振る。

　そっかぁ…結構酷い話になるけど、一応話しておこう。

「まず神道や陰陽道の一部で使う我等がせお姉様…祓戸神による祓い流す行為。つまりは黄泉や根の国・底の国送りですね。あとは成仏させたり主の御名において元居る世界への強制送還など、これらの祓うというのは、まとめて異界送りをしていると考えてください」

　ざっくりだけど、これ結構重要なんだ。

「そしてもう一つがその場から払う、です。要はただの立ち退き要求です」

「待って！？それ意味ないんじゃあ…」

　佑那は良いところに気付いたけど…うん。

「意味はあるよ？その時は払えているという意味では」

「「『ぇえー？』」」

　困惑するのも無理はない。

「無事はらうことが出来ました」なんて言われて安心していたら暫くしたら再びこんにちは！なんて事もまれにあるよ？

　殆どが場所に関する払いを行うのでその場所にはいないと思うけど、マンションの場合はその隣の部屋や上下階に移る…なんて事もありうる。

　みんなが固まっているので本題に移ろう。

「さて、悪霊とはなんぞや？と聞いたら宗派によって大きく変わるんですけど…課長は何だと思いますか？」

「ぅえっ！？…そうだな、死の前に痛烈なまでの怨みを抱いて死んだ者の霊？」

「佑那は？」

「えっ？んーっと、同じく怨みを抱いて死んだ者の霊」

「では当の本人、幽霊さんは？」

『シュウチャク、デショウカ』

「全員正解だけど三角！」

「えーっ！？本人が答えているんだから正解じゃないの！？」

「それが正解だったらそもそも自浄で悪霊ではなくなっているからね？」

「あ…」

　僕が言いたいことが何となく分かったかな？

「実際色々なパターンがあって正解はないというのが答えなんだけど、あえて言うのなら…昔の写真、かなぁ。悪霊が集合化して怨霊となるのは今は除外しますね」

「というと？」

「死の前からその瞬間まで怨みの念が籠もった結果、霊体が念に汚染されて焼き付いてしまったもの。または死の直前にふと想ってしまった結果」

「それらが等価値だと！？」

「未練って恐ろしいものなんですよ？例え小悟を重ねていても死の瞬間に未練が顔を出した瞬間に全てが水泡に帰すレベルですから…すっごいエネルギーなんですよ。それこそ散々恨みに思っていたのに最期の瞬間未練が昇華されれば常人が聖の位に至れるくらいには」

　だからこそ各宗教では末期は汚さぬように終わらせることを至上とする。

　例えば行っている修行が今ここで死ぬことによって無駄にならないかと不安になる可能性に対して、来世ではその修行によって半歩先に進んでいるのだという考えを教え込む。

　死の瞬間に対する不安を全力で取り除く。それこそが宗教の中で重要視されている物の一つだと思う。

　死への恐怖、死の後の未練。

　それらの憂いを断つか、丸く収めることで”成ってしまう可能性”を最小限に抑えようとする。

「で、ですよ。それに対してより強い思いをぶつけて消したり、洗脳したり、祀ったり（ヨイショしたり）そんなのどうでも良くなるようにすれば悪霊の定義は崩れるんですが…」

　僕はプライベートボックスから栗鹿の子を取り出し、掲げる。

「先着１名様！」

「「はいっ！！」」

　２人の青年がその場に現れた。

　両人とも兄さんの従者であり、廣瀬お姉さんの実質パシリのお二人。

　そしてその中の一人は…課長の弟さんだ。