974話 マヤ(自称)と酒呑童子、合流ス


「先着一名であれは…」

「殴り倒してでも…」

 物騒なことを言う2人に対して僕はもう一つを取り出してそれぞれに渡す。

「はい、もう一つありました」

「「弟様…」」

「ぇっ…まさか…」

 課長は目を見開き1人の方を見る。

「久しぶりです。姉さん。ああ、今は生前の罪科のため名を剥奪されたのでマヤと呼んでください」

 そう言って課長に微笑みかけた青年は…宙を舞った。



「おー…跳んだ飛んだ」

「うわぁ…前のデザート争奪戦の怨みですか?」

「いんにゃ、数時間前に栗もなかを奪われた怨み」

「それはギルティですね」

「…だからって、突然のバックブローはどうかと思うんですが…!?」

「ラス1の怨みだお前先に食った上で俺が買う前にラス1買いやがって!」

「アレも良いこれも良いと選んでいるから悪いのですよ」

「元邪仙と酒呑童子の一人とは思えない平和的な喧嘩とその内容だぁ…」

「「『えええっ!?』」」

「まあ、この周辺は結界を張っているから多少騒いでも問題は無いけど…夜の住宅街で大声を出したり騒ぐのは控えようね?」

「「『あっ、はい…』」」



「成る程…冥界の裁判で…」

「あの時は邪仙の力に操られている以上に酔っていた…とばかり思っていたんですけど、後に秦広王様より仙人の実験結果の一つだった何て恐ろしいことを聞きました。あの御方に助けていただかなかったら邪仙霊となっていたのは確実でした」

「兄さん、邪仙霊って何?」

「名称的には他の呼ばれ方もあるんだけど…仙人も妖怪も殺されたら死ぬんだけど、その霊は人とはちょっと違っててね…

 初めから怨霊級、もしくは御霊級の力を有しているんだ。さっき言ったように死の瞬間に強い思いや念が残った場合の話…あれを仙人や妖怪なんて力のある者が行った場合は…控えめに言って最悪の状態となるらしいよ」

「妖怪の場合は死んだ後に広範囲に祟る。それこそ退魔の手順を踏まずにやったら妖気をばら撒く妖怪の死体がそのまま闊歩し出す。それは疫病や人や獣を精神不安にし、戦乱を巻き起こしながらも力尽きるまで闊歩する」

 酒呑童子さんが栗鹿の子を食べながら捕捉してくれた。

「更に言うと仙人も妖怪も肉体が死んでからが本番だ。ガワが無くなったから終わりではないし、そもそも奴等の本体は霊体の方だからなぁ…」

「因みに私は怨霊化していましたがご主人様に分からされて浄化されました」

「「『分からされて…』」」

 力の差とかだと思うんだけど…なんで女性陣は全く同じ反応をするのかなぁ?

「ともかく、死後その感情意識を強烈な何かで上書きすれば問題無いんです」

 マヤさんが強引に話を切った。

「あ、じゃあ話しも分かるし、聞く耳も持っているわけだから…兄さん。最強の上書き方法がありますよね?」

「えっ?24時間耐久説法?」

「それ馬の耳に念仏案件になりません?聞き流す的な意味で」

「神仙界にお住まいの即身仏の皆さんが周りを囲んで読経とか?」

「悪霊や怨霊達にとっての新たな刑罰ですよね!?違います!兄さんには最強の2度殺し技があるじゃないですか!無念な死には尊死をですよ!」

 …あれで上書きできるの?


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