972話 今回の幽霊屋敷探査は当然許可を取ってあります。


 あっという間に…って程でも無いけど、そこそこ問題ごとを片付けながらも予定日となった。

 お通夜みたいな状態の自称親友高野香也と紅葉さん、ミシェルさん、ダニエルさん、そして護衛士官の5人が通称神隠しの家の前に立つ。

「昔はこの手前で出遭ったんだけど…おねーさーん、ボーイフレンドの香也がきましたよー?」

「ちょ!?止めて!?」

 紅葉さんの呼びかけに香也が慌て出す。

 が、

 凄まじい気配を感じ全員が家の玄関の方を見た。

『…カエ、レ』

 そこには身長180センチはありそうな女性の霊が立っていた。

「あの時のお姉さんの霊…」

 あれ?お姉さん、香也をガン見しているんだけど…しかもちょっと涙目で。

 あっ、一歩後ろに下がった。

「えっと、これってぇ…」

 ミシェルさんがジト目で香也を見る。

「再訪した性犯罪者ニ怯える女性ノ図…ですね」

 ダニエルさんが追撃する。

「ちょ!?自分被害者なんですけどねぇ!?」

『アノトキ、リョウノテ、デ…ワタシノアタマ、ツカンデ』

「もがいていただけですけど!?」

「そんな…これ不良債権を貰ってくれるお嫁さんと思っていたのに…」

『サスガニ、ワタシ、ニモ、エラブケンリハ…ホシイ』

 香也以外の全員が「そりゃそうだ」と納得した。



 幽霊さんを説得して調査隊を中に入れ、情報を聞き出す。

「成る程。ここが危険だからと入らないように追い返していただけと」

『ワタシ、ココデコロサレタ。ダカラコレイジョウワルクナラナイ、ヨウ、マモル』

「というと…ダンジョンに入って殺されたと?」

『チガウ。ワタシ、ショユウシャ。オトウトニ、コロサレタ』

 おっとぉ?

『コジン、ダンジョン、テニイレタト…』

 ああ、そういう事か。

 富を独占できると思って姉を殺したと。

『デモ、ワタシハハイリカタヲオシエナカッタ…フウスイシノスキル、フウジタ』

 ああ、だから手順を踏まなければならないと。

「だったら香也はちょうど良いわけだ。しかし…貴女が危険と言うからには余程では?あの時は貴女の周辺空間が異界化していましたよね?」

『チミャクヲズラシテ、イチブ、ガワタシニナガレコンデタ』

「……地脈が絡んだ場合、怨霊級どころか御霊級だぞ。余程風水士として有名だったんだな」

 課長が納得したように頷く。

「もしかして、風水士の”し”って…師匠の師でしたか?」

『ソウ。モトモトソノカケイダッタラシクテ、サイノウガカイカシタ』

 上位職ですやん…初手上位職なら更に上…聖の位を得られる逸材ですやん…

「勿体ない…逸材が」

「現在もその体、実体化出来るわけですから…僕の使い魔になります?」

「岩崎!?」

 僕の問いかけに少し驚いた顔をする幽霊さん。

『ワタシ、イチオウアクリョウ…』

 あ、自覚あるんだ…

「弟さんが近付いたら衝動で殺してしまう程度のものですよね?」

『ソウ』

「程度って…」

「そこで殺してしまった場合、殺人衝動が快楽となって無差別に殺すようになるんですよ…うん。僕の使い魔にならない?」

『フツツカモノデスガ…ドウゾヨロシク、オネガイイタシマス』

 幽霊さんが膝を突き、三つ指をついて挨拶をしてきた。

「香也よ…残念だがイマジナリーワイフは岩崎のモノになったぞ」

「課長!?無茶苦茶人聞きが悪い事言わないでもらえませんかねぇ!?」


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