401話 上陸と拠点確保

 SIDE:香川県


 銃声と怒声が市街地に響く。

「魔水晶を拾って放り込め!芦田隊は援護を!」

「っぞおおおおおおお!」

「マドがいるぞ!宝珠───あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!」

「鬼や山爺だけじゃ無い!かぎ爪足の大おぽっ!?」

「杉下?杉下!?」

「大鬼から死霊まで…巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るなあアアッッ!」

 聖属性となった弾丸を撃ち、呪符を駆使し聖光で祓う。

 それが出来たのも上陸後の4時間だけ。船を潰されて以降は抵抗は無意味だと言わんばかりの物量で妖怪や死霊が市街地の奥から押し寄せる。

 対戦車弾を鬼に打ち込むも大きく仰け反るだけで致命傷を受けない。

 しまいには見ただけで死ぬようなどうしようもない化け物まで出てきていた。

 そんな中、海の方から大きな音と共に巨大な揚陸艦が入って来るとの情報が飛び込んでくる。

「その船を守れ!撤退では無い!あの船を速やかに逃がすんだ!本部に、報告を!」

 隊長と思しき男が叫び、複数の部隊が周りに弾幕を張りながらも港へと走る。

「引き返せ!ここはもう駄目だ!すぐに引き返して本部に、部隊全滅を報───」

「第一重装救命士隊、威嚇放射!」

 兵士の血を吐くような台詞を遮る女性の大音声。

 それと同時に揚陸艦の真上に複数の魔方陣が展開され、光の杭が辺りに降り注ぎ周辺にいた死霊や餓鬼、小鬼の類を一掃した。

「いつから近代兵器だけと錯覚した?……ってな。言ってみたかったんだよ」

「司令!突入するんで邪魔です!」

「はいはい…部隊全員に告ぐ!警戒態勢は上2。妖気含め総合的に判断した結果即死系や毒劇物、怪力その他諸々いるのは間違いない!我々はあくまで支援部隊だが、陣地防衛は職務内だ!いいか?我が部隊は積極防衛である事を忘れるな!」


 ここに、メリア・ルー・アルメリア外務司令武官率いる第一連隊が高松市に足を踏み入れた。



「やはりいたな!乱戦対策だ。聖光器レベル4斉射!」

「司令、拠点はどちらに?」

「今は周辺掃討しつつ前進だ。確か近くに城跡があったと思うが、そこに建てれば地の守りと合わさって強靱な医療拠点が出来るだろ」

「ではその旨指示を出します!」

 メリア部隊は歩みを止めず、周辺の妖怪死霊をなぎ倒していく。

「これは…少し改めなければならないようだな。拠点を築いてもどれだけの人間がいるか…」

 しばし思案した後に側にいた護衛士官に声を掛ける。

「お前に救命士200、救急救命士10、重装救命士10を預ける。周辺の要救助者を適度に集めてそこの広場まで誘導してくれ。無理に移動はさせるな。

 同じ規模をあと2部隊用意して同じように回りながら活動範囲を広げる。

 ただし、対処の難しいモノが出た場合は速やかに退け」

「畏まりました」

 護衛士官は敬礼をし、そう答えると装甲車両へと走って行く。

 横に居た2名の護衛士官に「おまえらも行け」と言うと2名も同じように敬礼をし、装甲車へと走り出す。

「さぁて、こちらは不利だが…それも拠点確保まで。初手から読めるか?」

 メリアは時折飛来する自動車を不可視の大盾で弾く重装救命士を眺めながらそう呟いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る