813話 人である事、神である事
「兄さん。今兄さんは役職”神”だと思ってください」
「役職が、神」
「ここがお仕事場です。あと、出張的にマンションの神様方を癒やしています」
「…でもそれは」
「癒やしています。だって兄さんのご飯は最高で、食べると力が湧き上がってきますから」
「…そう、かな?」
「ずっと食べてきた私が言うんです。間違いありません!」
「でも佑那以上に静留さんが食べているよね」
「……ホテルまるごと兄さんフェアの件は絶対に許さん」
ああ、やっぱり根に持っていた。
佑那あの時修学旅行だったから仕方ないよ…だいぶハードな修学旅行だったらしいけど。
「話を戻しますが、兄さんはこれまで神々に行ってきた行為と神復活の功績でしたっけ?それが切っ掛けですよね?」
だったと思う。と、頷く。
「という事は現在兄さんが行っている事は神事です。神に行うという神事ではなく神が行う神事です。いいですか兄さん。今現在兄さんは当たり前のように神のお仕事をしているのですよ」
「えっ?」
そうなる、の?
「そして人として協会でお仕事してますよね?はいここで問題です。時間配分的にどっちに重きをおいていますか?」
「えっ?……神?」
だって協会のお仕事って配信とか入れても8~9時間だし。
「兄さん」
佑那が両手で僕の頬を包み込む。
「キスしたい…じゃなくて、兄さんはここまで神のお仕事しているので人でいようともがいても余り意味は無いんです。
兄さんは人です。間違いなく人です、が!神のお仕事もしています!でしたらその権限を逸脱しない程度に使えばいいんです。
気にくわない人にはプイッ!で良いんですよ!巫女様ですけど神様ですから!」
佑那がそう言いながら僕を抱きしめる。
「兄さんは兄さんです神でも人でも何でも良いですけど、私の兄さんである事をやめないでください…」
「いや、それってやめられるの?」
「無理です。全力で抵抗しますしそれができるとなったら直前で自害します」
いや、佑那の兄妹愛重すぎない?
佑那に感謝を込めて頬にキスをしたら「結婚したいの合図ですね!」とか訳の分からない事を言ったので「兄さんともしてるし、あいさつの1つだよ?」と言ったら縁側に打ち上げられた鰭脚類の如く動かなくなった。
「結羽人兄さんとはもっと進んだ関係に…」
とか戯れ言言っていたけど、僕と兄さんはそんなんじゃないし。
神所へと入り、祭壇の前に買っていたお酒のうち日本酒、ウイスキー、ワインを1本ずつ並べ、封を切る。
「人の戯れ言を気にする事無く思うままに敵を打ち払い下さいませ」
そう言いながら大盃を取り出し、箱庭の屋敷の水を並々と注ぐ。
「私は癒やす者。守り闘い力尽きる前に権能にて癒しを───」
と、大盃の水が減っていく。
そこにすかさず水を加える。
お酒もそれぞれゆっくりとだけど減っていくが、大盃の水ほどではない。
「神々よ、精霊達よ…わずかなりともその心身を癒やす一助となる事を願う」
手持ちの水を大盃に入れる。
と、
『パパ!なんかすごいたくさん世界に力が流れてきてる!』
マイヤが焦ったように神所に飛び込んできた。
えっ?なんで?
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