812話 佑那の言葉
「ミツルギ姉様、キュクロープスさんは誰に唆されたんですか?」
「余所の神らしい。一声決起を行うと数週間前には言っていたらしいが連絡が途絶え、どうしようも無くなって1人で行動を起こしたらしい」
「…希望の光が消えたから自棄になったと。余所の神何となく見当はつきますけど」
可能性としては連絡が途絶えたタイミングから考えてロキやその周辺かなと思う。
「人は人の道理でいきる、か」
1日の片付けを終えた僕は縁側で腰掛けて息を吐く。
「兄さん兄さん!ジャンヌに何したの!?」
佑那が飛び込んできた。
「えっ?腹筋触らせてもらっただけだよ?」
「えっ!?それだけであんな艶やかな雰囲気出してずっとウットリした感じになれるの!?」
いやなに言ってるのか分かんないですけど?
「なんかすっごい愛おしそうにお腹さすっていたんですけど!?」
僕に言われても…しかも何時間前の話なの?
困惑する僕に佑那が僕の横に座る。
「私のお腹も「いやだよ」なんで!?」
「佑那のお腹、兄さんほど綺麗に割れてないし」
「…結羽人兄さん、なんであんなに鍛えているのにマッチョではないんですかねぇ」
「意味のない無駄な筋肉は要らないから、あれくらい綺麗な筋肉欲しい…」
「兄さんは今のままで良いですよ?」
「えっでも欲「兄さんは今のままで十分ですよ」…」
あっ、駄目だ。こうなったらずっとループ状態になる。
僕はソッと目を逸らした。
「ところで、兄さんは何を悩んでいたんですか?」
「今回のキュクロープスさん襲撃事件の事でね…」
「あぁ、どうしてその件で兄さんが悩むんですか?」
佑那の言葉に首をかしげる。
どうして?
「毎度の事ですけど、兄さんは働き過ぎで悩みすぎです。兄さんは結羽人兄さんのように無茶苦茶超人でも歩く問題解決兵器でもないんですから」
「歩く問題解決兵器…」
兄さん、佑那にとんでもない言われ方していますよ…
「兄さんは本来メッセンジャーであってそれ以上の役割は癒やしですよね?」
「…うん。でも」
「でもではないです。良いですか?人より力や能力があるからといってそれをしなければならないという事は無いんです。
確かに偉大なる力には大きな責任が伴います。が、兄さんの力の主戦場は今やここです。この箱庭なのですよ?」
ここが、主戦場?
「確かに兄さんは地球の日本生まれで現在もそこに居ますが、この世界を管理運営する事が第1なのではないですか?」
「………あ」
僕、その辺り全部マイヤに任せっきりだ…
「確かに実家が危険な事になっていてご近所さんや知り合いが危機にさらされていますが、兄さんに関してはそこよりも優先すべきは自世界です!兄さんの知り合いの方々に関しては最悪神国に行ってもらうという選択肢もありますので」
「いやでもそれは」
「兄さん」
「?」
「兄さんは人です。しかし、神ですよね?」
「…えっ?」
「ですから二重生活であっても本当に優先すべきはここであって、ここから何か助けになる事ができないか考えるべきなのです」
佑那の真剣な表情に僕は何も言えずただ見つめる事しかできなかった。
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