604話 宴の最中と、宴のあと
白獅子達は3分と経たずに戻って来たのでお駄賃を渡そうとしたが、しょぼんとしたまま首を横に振って受け取らない。
「もしかして神様方が対応していたの?」
「ガウゥ…」
一頭が小さく頷いた。
「まあ、残念賞という事で…5枚ずつね」
僕は白獅子さん達に5枚ずつクッキーを渡した。
そろそろデザートの時間かなと思い神域に行くと、通常の倍ほどの神様方がお酒を飲んで談笑していた。
「あ、ゆーくん」
ミツルギ姉様が僕に気付き、そして何かを察したのかスススッと僕の側へ来た。
「デザート?」
流石に鋭い。
「はい。そろそろデザートの用意をしようかな、と」
「食べ物は8割くらいは無いし、お酒も半分は無いからちょうど良いかな?」
「僕が用意して15分そこらだと思うんですけど…」
「10分でほぼ消えたのよ…あと、ダンジョンの尖兵と化した元自衛官78名が正面と屋上から来たけど…全て鎮圧されたわ。死者32名、残りは手枷口枷して建物前で隔離。現在引き取り待ちよ」
うわぁ…
死者が出ている事にも驚きを隠せないけど、みんなして「元」と言っていることに違和感を覚え…ああ、鑑定眼か。
僕は空の飯櫃をしまい、銀のトレーを取り出す。
そしてそこにバウムクーヘンを三種類丸々1本取りだして置く。
他にも幾つかのお菓子を出し、最後に今回購入した和菓子を半分ほど並べておく。
───ミツルギ姉様の視線がバウムクーヘンにロックオンされているぅ…
「ゆーくんゆーくん、これは、食べて、良い物なのかな?」
「勿論ですよ。どうz…うん」
ほぼ全員群がってきた。
僕はソッとその場を離れようと…ああ、思い出した。
「済みませーんちょっと良いですかー?」
僕の声に全員がこちらを向く。
「えっと、かなり特殊なお酒を各1本だけこちらに置いておきますので、皆さんで少しずつ別けて飲んでください」
そう言って箱庭産のシードルとミードを1本ずつテーブルに置く。
『!!?』
ザワリと神様方がざわめいたけど、僕は気にせず箱庭へと戻った。
箱庭でもデザートを出して娘2人から笑顔を戴き満足していた所、課長から通話が入った。
「はい。岩崎です」
『休んでいる所済まない。今マンション前に居るんだが…自衛隊が罪人達を連れていこうとしているんだが何かに阻まれていると途方に暮れていてな』
「あっ、ちょっと確認します」
急いで箱庭から出て神域へ入る。
「うわぁ…」
そこは死屍累々だった。
元気なのはゆる姉様と天之御中主様くらいで…ミツルギ姉様は「てぇてぇ」しか言わない何かになってるし。
「あのぉ…天之御中主様、外の襲撃犯達を引き取りに来ているようなのですが」
僕の呼びかけに天之御中主様はチラリとこちらを見る。
「ああ、今解除しよう」
「ありがとうございます」
「ところで、このシードルはとても良い物だけど…こちらのミードは危険だ。効果が強すぎる」
そう言って半分残っているミードを僕に渡す。
「効きすぎる薬は劇薬と同じ。ただ力を失いつつあった者達であれば往年の力とまではいかずとも千年前に使えていた権能程度なら複数回利用可能じゃないかな」
「劇薬で倒れているんですか…」
「半数はね。もう半数は尊死?…なんだかこちらの方がダメージが大きい気がするが…うん。過ぎた回復方法だ」
シードルを掲げカラカラと笑う。
「今日は良き日だ。馬鹿共はやってきたが興醒めにもならず楽しい宴だったよ」
天之御中主様は残ったシードルを飲み干して立ち上がる。
「さて、力を過剰供給した所で…私達も対ダンジョン用の訓練ダンジョンを作るとするかな」
「えっ?」
「あーちゃんまだ秘密なんだからそれ言ったら駄目ー!」
ゆる姉様が天之御中主様にそう怒る。
「いやいや、一応説明しておいた方が良いと思うよ?」
「うー…驚かせようと思ったのに…」
いや、何を?僕の困惑は通話着信に遮られた。
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